少年に、普段の行いから私は賢いと刷り込んだかいあってか、ホグワーツ特急では他の荷物と共にではなく少年の隣に丸まって移動することを許された。
安心しろ、少年。私に利がないのだから期待通り暴れはしないさ。

「…秘密の部屋」

現在、コンパートメント内に二人きり。少年の呟いた言葉に思わずぴくりと耳を動かした。少年に顔を向ければ、視線に気づいたらしく少年も私を見る。

「今年こそ、見つける」

…うむ、いい予感がしないな。
少年のネクタイはグリーン。つまり寮はスリザリン。そして…秘密の部屋。
だいたい、コイツはそもそも顔立ちが似ているんだ。…あのサラザールに。まさか血縁じゃないだろうな?私の死後何年経ったか知らないが、そんな因果は要らない。

私が不吉な予感に顔をしかめていると、足音が聞こえた。私はそっちに目を向け、四つ足で立ち上がり微かに身構える。
少年も私の様子に、ドアに視線を向けた。


「あっ!リドル先輩やっと居た!探したんですよ?」
「…ああ、オリオンか」

ノックもせずにコンパートメントに入って来たのは、少年に負けず劣らずの美少年だった。少年と似ているようで僅かに青みがかった黒髪が綺麗だ。少年より二歳年下といったところか。
…リドル。そうか、それが少年のファミリーネームか。そしてもう一人のおそらく後輩の名がオリオン。

私がじっと二人、特にオリオンを観察していると、オリオンの目が私をとらえた。瞬間、オリオンは大きく目を見開く。

「うわ…綺麗な黒猫。リドル先輩の猫ですか…?飼ってましたっけ?」
「最近からな」

リドルは満足気に答えた。…そうか、変に大人びたリドルにも自分の猫を可愛がるという心があったか。
見るからに触りたいときらきらした目で見てくるオリオンに、まぁリドルの後輩ならいいかとまた丸まる。

「にゃー」
「っ…かーわいい!」

身体に腕を回され、苦しくない程度に抱き締められた。驚きはしたが、オリオンの満面の笑みにやむ無くされるがままとなる。

「…」

リドルの不満げな視線が居心地悪いです。

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