猫の暮らしにも慣れてきた。そんな自分が複雑だ。
まぁ、私は捨て猫だったにしては恵まれている方なんだろう。あくまで、猫という分類の中では。

「猫」
「にゃあ」

呼ばれたので返事と共に少年の座るソファーの肘掛けまで一躍で飛び上がった。
特に用は無かったらしく、私の頭を左手で撫でながら少年は器用に右手だけで本を読み出した。…闇の魔術大全集か。私も読んだことあるぞ。

…そう、つい一週間程前、気づけば猫に生まれ変わっていた私は、漏れ鍋に泊まっているらしい読書に勤しむこの美少年に拾われた。
少年の意図は解らない。おいでと言われ、まぁいきなり野良として生きるのも辛いかと付いて行けばペットのようになった。
少年の名前は知らない。名乗られなかったしな。同様に、少年も私の名前を知らない。
どうやら英語を話せば普通に通じるようだが、化け猫扱いを受けるのは面倒なので話せないを装っている。少年から離れた後、必要があれば話すさ。

そう、それで少年も私を猫と呼ぶので私もこのように心中で彼を少年と読んでいる。変な名をつけられないだけましだな。
それから…そうだな、学校の宿題らしい羊皮紙のレポートの内容を見る限り、この少年は彼の同年代よりかなり賢そうだ。後はどうやら家出中らしい。

「…猫」
「にぃ」

読み終わったらしい。視線に倣い少年の脚の上に飛び降りそのまま丸まれば、優しく撫でられる。
食事と寝床つきでこの待遇なら、もうしばらくは少年のペットで居てやってもいいかもしれない。
それに、少年の本の虫具合を見るに、生前の私の家にある書庫に招いてやりたい。きっと喜ぶだろう。

さて、学校の始業まで後何日なのだろうか。
私もかつてはホグワーツに居たからな…始業日が9月1日なのは覚えている。場所からして、少年が通っているのもホグワーツだろう。
少年は私をホグワーツまで同行させる気だろうか?…まぁ、それはそれで構わんが。

「にゃあ」

猫語喋るの、慣れたな…。

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