痛いな。
歩き出したのは私の方なのに、かつてない程痛い。サラに葬られたあの時より痛い。
きっとそれは私の成長なのだろう。嫌な事は全て拒否して我儘に生きて来たから、下手にそれだけの力があったから、こうも痛いとは知らなかった。

女子トイレに戻ると混乱したように此方を覗き込んでいた女子生徒の幽霊を迷わずすり抜け、次いですぐその後頭部にオブリビエイトを放ち私の事を忘れさせた。幽霊相手にでも効くものらしい。

猫に戻って女子トイレから出た所で、嫌な奴に会った。

「お嬢さん、その女子トイレは少々事件があっての。危ないよ」
「にゃー」

私にとっての彼と、彼の秘密の部屋における全ては危なくないから、いいんだよ。
わざわざこの女子トイレにリドルの猫である私が居た事を勘繰ってるんだろう教師の男に、何も知らぬ猫のふりをして隣を通り過ぎようとする。

「…アニメーガスではないようじゃしの。お嬢さんは新種の魔獣かな?」

あえて無視して、振り返らず歩いた。

正義と私はやはり、相入れないな。サラと話した後に会ったせいで心底実感した。
私は世界と一人なら一人を取ろうとするちっぽけな存在で、眩しい光と静かな闇なら闇を心地よく思うから。

「お前がリドルと敵なら、私もお前と敵なんだよ」

小さく呟いて微笑んだ。
だからと言って私は別に戦いたいわけでもないし、マグルも憎くなければ、征服欲も前世に置いて来た。リドルが本当にピンチな時に助けるだけだ。今あの教師を消しておく気も無い。


「リーラ」

スリザリン寮の談話室前で待っていたリドルが、しゃがんで手を広げ私を呼ぶ。私はゆっくりと歩いて行ってその腕の中に包まれた。
リドルの体温が暖かかったから、また少し涙が出た。

そして…やっぱり、暫く好きな女は作らないで欲しい。と、思った。

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