戦いが終わる前に、私はリドルの見える所にまで辿り着いた。
だが何もしなかった。ただ見ていた。

それは私が冷たいからではなく…それもまぁ事実ではあるが、別段手を出す必要が無いと判断したからだ。
まだ粗削りではあるものの、危うい所も多々あるものの、リドルは充分に強い。無論、私や前世で会った私の知り合い達よりはまだ未熟だが?

それに、リドルのプライドの高さだ。見も知らぬ女に助けられたなんて機嫌が悪くなるに違いない。

「先輩、今ので終わりですか?」
「ん?ああ、お疲れ。初の殺傷任務だったけど、どうだった?」
「え、っと…あはは」

空笑いを浮かべるオリオンに、気配を最小限まで消してそのやり取りを見ている私は小さく笑う。
私が居なかったら恐らくやられていたが?

「帰るか」
「あ、あの先輩一ついいですか?」
「今で無ければいけないのか?」
「一つだけ今のうちにお願いします。あの、今日の戦い成人済みの女が味方に居ましたか…?」
「成人済みの、女?いや、女すら居ないが。それが?」
「あー…いえ、ならいいんです。気のせいでした。帰りましょう」

オリオンが先に姿眩ましし不振気な顔をしていたリドル、他の手下達も次々と消えて行く。

私も、訳は知らないがオリオンは何やら私の事は秘密にしておいてくれるらしい、と好都合に思いながら彼等に続き姿眩ましした。

そういえば、リドルとオリオンの会話で彼等は皆名前を出さずに会話している事に気づいた。
まだ学生の癖に、悪の道を行くのに軽々しく自分の身分や素性を明かす危険性のある行為をする方がおかしいのだから、当たり前だが。

だが、なら何故あの時オリオンはわざわざ私に自分の名を名乗ったのだろう?

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