つくづく私も面倒見の良い奴だと自分の事ながら呆れつつ、人間の姿をとり以前アルファードの衣装ケースから勝手に拝借した服を着たままである事を一応確認してから、姿眩ましした。


久しぶりに使った子供騙しでない魔法も問題なく使え、むしろうろ覚えの場所知識で簡単に飛べたのだから魔力の調子自体は前世とそう変わらないのだろう。
さて、この辺りでリドルとその手下達が前から邪魔だとぼやいていた一家とどんぱちしているはずだが…と真夜中で街灯も少ない視覚を使えない視界に、代わりに耳を澄ませた。猫で居た期間が長かった為か、この耳は簡単に僅かな音から大凡の距離を割り出せた。
音の大きさから、思った以上に派手にやっているらしい。

だがリドルの為にわざわざ走ってやるのも癪なので、普通に歩きながら戦場に向かった。

リドルの魔力を追ってリドルの元まで行く途中、見慣れた姿と、その前に立ついやに目立つ敵一家の一人だろう相手に足を止める。

「はっは、当たらねぇぜガキ!」
「…ちっ」

素早く魔法の線を交わす鼠タイプの相手に、腹立たし気に舌打ちする声が聞こえた。
まぁ、オリオンの奴は年齢的に実践経験が少なくとも納得か。奴には色々利用させてもらってるしな、仕方ない。
私は一つため息を吐き、オリオンの元まで瞬時に姿現しするとその背中を蹴飛ばした。

「…っな!」

一メートル程吹っ飛んだオリオンがさっきまで居た場所を、光線が通過する。鼠タイプの敵が放ったものではない。それを囮として後ろから隠れていたもう一匹が油断している背中に魔法を放つ。よくある手だ。
顔から転けるのは回避したものの、身体を反転だけさせて尻餅をついたような態勢のオリオンも、通過して行った光線に事態を把握したらしい。だが見覚えのない私に助けられた事に混乱しているようで、このまま二対一で戦える気配はない。

「あーあ、もうちょっとだったのに。でも俺たち女ごときに負け、」

恐らく私を馬鹿にしようとしたのだろう鼠タイプの男に、私は数メートルは離れたこの距離から無言で片手を振り下ろすだけで、その頭から股までを一直線に二つに凪いだ。
醜い程に血を噴き出す家族に、未だ何が起こったのか理解出来ていなさそうなもう一人にも瞬時に間合いを詰め、見えない魔法の刃でその首を斬り落とす。
二体の死体を作り出したこの間、6秒。そう思っていたより鈍ってはいないらしい。

私は自分に返り血が跳ねていない事を確認してから、呆然と尻餅をついたような態勢のまま私を見ているオリオンに手を差し出す。

「あからさまな陽動に、簡単に引っかかるな」
「え、ありがとうございます…?」

目を白黒させながらも、オリオンは戸惑う事なく私の手を取った。もう少し私を疑ってもいいと思うが。

「あっれ…女なのに、おかしいな…?」

立ち上がったオリオンが自分の手を見ながらまだ何か混乱していたが、私もオリオンのおもりを目的に来た訳では無いのでこれ以上構ってやる気はない。

「私はもう行く。お前もとっとと仲間の元に戻れ」
「ま、待って…!お姉さんっ!」

我ながら素っ気なく言ってリドルの気配まで歩き出そうとすれば、呼び止められた。
一応半身で振り返り視線で何事かと促す。

「俺、オリオンです!オリオン・ブラック!」
「知ってるよ」

薄く笑って、また歩き出した。
少し遅れたが、やはり走る気はない。私はあの友人をそこまで過小評価していないのでね。

_
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -