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目覚めると、昨日学校から帰った後の記憶が無かった。
でもそんなのは毎年恒例の事だから、私は気にせず制服に着替えて今日も家を出る。それより昨日は柳君にも仁王君にも、それはもう散々に好き勝手言ってしまった。大人がお酒飲んで失敗する感覚ってこんな感じなのかもしれない。
はぁ…やっちゃったなぁ…昨日の私、テンションおかしかったもんね。テンション高いっていうか、擦れてたみたいな。

昨日の失態についてそんな感じに後悔しながらも学校に着き校門まで歩いてた所で、校門前で腕を組んで立つ威厳たっぷりな人が知った顔である事に気づいた。

「あれ、真田君。おはよう」
「ああ、おはよう」

相変わらず私を見る時の顔が険しい真田君に、自業自得とはいえちょっと居心地が悪い。
こんな所で立っていたぐらいだから、真田君も誰かを待っているんだろう。私は変に絡まず大人しく教室に行こうか。
そう一般的な結論を導き出し、速やかにじゃあ、と隣を通り抜けようとすると何故か真田君に道を塞がれた。

「少しいいか?」
「え?…あれ、もしかして私を待ってたの?」
「ああ、聞きたい事がな…。すぐ終わる」

聞きたい事、というフレーズには昨日の事から嫌な思い出があるんだけど…真田君の頼みってなんとなく断り辛いんだよね。すぐ終わるって言ってるし。
とりあえずこのまま話すのも流石に目立ち過ぎるので、私は真田君に話は裏庭でしてもらう事にした。ただでさえ、校門前に、しかも真田君が立っていたせいで相当目立ってたんだから。もうこれ以上私を目立たせないで欲しい。…いや今までのは勝手に私が目立ってただけなんだけどさ。
私の提案に快く一緒に来てくれた真田君は、裏庭まで来たものの何故か話し出す事は無かった。沈黙が流れる。…私もだけど真田君も何だか気まずそうな顔だ。

「えっと、何かな?」

もしかして柳君と仁王君に何か聞いて、聞きたい事ってそれ関係だったりする?と不安に思いながらも笑顔で尋ねる。

「昨日は、何も無かったか?」
「え…?」

昨日?何も無かったか?いや、色々やらかしはしたけど…何も無かったか??
あ。私、そういえば家に帰ってからの記憶……。

「真田君さ、昨日私に会ったりした?」
「…何だその質問は」
「あはは…」

記憶が無いんですとは流石に言えない。そして真田君の反応からどっちなのかも結局わからない。困ったな。

「……お前は、もう少し自分が人に与える影響を自覚した方がいい」

やっぱり真田君は険しい顔で私を見た。
話の繋がりはわからないけど、私はそんなに人に影響を与えているだろうか?昨日の、柳君や仁王君にはともかくとして……いや、確かにここ最近はそりゃ与えてるか。

「馬鹿もん、違う」
「え…?」

何かを否定された。私は真田君を見る。真田君は苦汁を飲むような表情をした。

「言うなと釘を刺されてはいるが…さっき聞いた事は、聞くように頼まれたんだ」
「……誰に?」
「わかるだろう、幸村にだ」

今度は、私が苦汁を飲むような顔をしたかもしれない。どうだろう。鏡が無いからわからないけど。

「幸村が、お前を心配していた。…俺はもう行く」

居心地悪そうに、真田君は早足で居なくなった。その姿が見えなくなってすぐ、私はその場にしゃがみ込んだ。

「…。……」

何かを口に出したくて、でも何も出て来なかった。大丈夫、泣いてはいない。

頼むからお願いだから、私をこれ以上悪者にしないでください。最低だって罵って、私なんて気にしないでください。

そんな優しさは、要らないの。

                


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