28.5

菅野曜一、今年の誕生日まだ来てないんで14歳。ただ今14年数ヶ月の生涯で一番じゃないかってぐらいの混乱中。

静まり返った教室にムズムズして、難しい顔をしているあずみんを見る。

「あずみんせんせ、俺何が何だかぱっぱらぱーであります」
「うん、最初から菅野ちゃんに期待はしてないから。後、僕もまだ考え纏まってない。菅野ちゃんはとりあえずよっしー正気に戻してあげて」

放置ですか。
俺は仕方なく、魂飛ばして斜め上を見ているよっしーに下段回し蹴りによる膝かっくんを強行したった。

「ぅおえ?!は?は?!ちょ、菅野ちゃん流石の温厚な俺もそれはキレますけど…っ?!」
「おう、魂おかえりよっしー」

かろうじて転けなかったよっしーが振り返り、俺の肩を掴んで怒鳴る。俺はそれに笑ったった。
そこで初めて自分が魂を飛ばして小旅行にランデブーしてた事に気づいたらしいよっしーが、目を見開いて、それから顔を真っ赤に染め上げる。

「ひゃー、惚れた?」

からかうように笑えば、よっしーはぱくぱくと金魚みたいに口を開けたり閉じたり繰り返し、それから睨みつけてきた。

「お前と一緒にすんなし!俺は赤也とサララを応援してんの…っ!!」

そのわりに君余裕なさげだけども。
ぷりぷりと怒るよっしーに、そっかぁとやる気なく返す。でも本当は凄いと思った。
だって俺なら、正面からあんな笑顔直視してたらガチで惚れちゃってた自信ある。サララは特別可愛いってわけじゃないけど、空気が落ち着いてて綺麗だし、何よりあの笑顔は…なんだろう、なんて言ったら言いかわからんけど、幸せそうだし向けられた方まで幸せになりそうで離したくないような…ダメだボキャ貧。
とにかくね、凄かったんですよ。うん。

「あずみん纏まった?」
「まだ。難問過ぎる」

あずみんにそこまで考えさせるサララはやっぱ只者じゃないなぁ。俺、一年以上親友やってるけども、あずみんっていっつも三秒で答え弾き出して、はいじゃーよっしーはこれ。菅野ちゃんはこれやって。って指示してるイメージだし。
俺は頭使うの苦手だから、考えてくれるのマジで助かる。


「ねぇ…やっぱりちょっと酷くない?」

ふと、女子の声が聞こえた。

「あんななるなんて…あの泣き止み方、ちょっと異常だよ。私怖い」
「うん…私、いっつも平気そうな顔してたから水代さんって気にしてないんだと思ってた」
「私、金曜日に水代さんまき達に呼び出されたって聞いた」
「やり過ぎだよね…だって、金曜日って言ったら朝の赤ペンキ…あそこまでやるなんて」

ぽつぽつと話しては膨らんでいくそれに、俺は笑う。

「菅野ちゃん、待った。落ち着け」

腕を掴んで来るよっしーを、沸騰通り越して冷え切った頭で振り返る。

「目据わってるよ。で、今下手に手出したらサララに迷惑。解ったら座っときな」

あずみんの冷静な目に、ちょっと落ち着く。でもまだ抑え切れない。

「別に、俺苛められてる時に助けろって程厳しくない。だからマジで見てただけの奴にまでイライラしない」
「うん。菅野ちゃんは、無視したり虐めてた人の話に乗って悪口言ったり軽い気持ちで根も葉もない噂広げたり、そういう本当は些細でも加害者なのに自分を傍観者だって思ってる奴が、自分の事棚に上げて同じ加害者批難するのに怒ってんだよね。わかってる、僕達は菅野ちゃんの気持ちわかってるから」

ボキャ貧で上手く自分の気持ちさえ伝えられない俺の言葉を、あずみんが代弁して優しく諭す。
そのお陰で自分でもどう説明つけていいかわかんなくて微妙に理解し切れて無かったこのイライラの理由を、ちゃんと理解出来た。ついでにイライラもだいぶ収まった。
俺は最後に残ったイライラを外に出すみたいに大きく舌打ちする。

「菅野、ああいうのマジで本当にめちゃくちゃ嫌い」
「おう、吉村もだ」
「安住もさ」

コイツ等と親友で良かった。

                


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