男主短編 | ナノ




※現パロ





多分この美少年、気が狂っている。危ない人だ。
いや待て落ち着け名前。これはこの美少年なりのジョークかもしれない。おい頼むから出会い頭のジョークはもっと笑わせられる自信満々なネタにしてくれ。対処に困る。

平凡な家庭に凡庸な顔で生まれ、普通レベルの高校に通う正しくザ・平均な俺が、白昼堂々何をこんなに悩んでいるのかというと、放課後見覚えのない茶髪の美少年にいきなり名前を呼ばれて出会い頭に「初めまして、また君に会えて嬉しいよ」とか言われたらそりゃ誰でも困るだろ?
何で初めましてなのにまた会えて嬉しいの?え、初めましてですよね?うん、俺もやっぱり見覚えありませんし。あ、一方的に美少年は俺を何処かで見掛けていて、それが偶々俺が善行をしているところで、だからあの時のいい人だまた会えて嬉しいな的な?なーる。ちくしょーなんて無理矢理なんだ。

「という本当にあった怖い話を朝体験した俺に、親友文次郎から一言」
「あぁ、伊作か…せいぜい頑張れ」
「哀れみの視線が痛…って、文次郎さんあの人と知り合い?!」

親しげな名前呼びに思わず詰め寄って聞けば、文次郎は目を細めた。何だろう…悟りと、やっぱり俺への哀れみを感じる。

「友人、だったな。少なくとも。…どうせ今世も、お前は逃げきれねぇんだろうな」
「意味わかんないけど凄く不吉っ!」

俺が恐怖からぷるぷると震えていると、文次郎がため息を吐いてすっと俺の後ろを指さした。
俺は意味がわからず首を傾げ、後ろを振り返った。固まった。

「…ぇ、え?」
「激しいデジャヴを感じるな」
「いや文次郎さん、何故美少年が…だって学校違うよね?モロ制服とか違うもんね?」
「勤め先同士の敵対関係さえ無視して乗り越えた奴だからな…」
「文次郎、遠くに行かないでっ!俺今本当に混乱してるの!」

何故俺が叫んだのかと言えば、朝の美少年の伊作さん?が教室のドアの影からホラーさながら此方を見ていたからですとも!
いや何でいるの?!てか視線が明らかに俺を見て、え、マジで何でだし?!

「伊作は昔からストーカー気質ってかストーカーだしな…」
「はぁ?!文次郎、それ犯罪!」
「犯罪とか言っても仕方ない時代だったしな…。まぁ、伊作は性犯罪者の気もあったが」
「文次郎さん、最後のぼそりの内容超怖いんですけどぉおおお!」

性犯罪とか、まるで笑えねぇ…!てか、そんな友達いる文次郎も何なの?!

と、急に背筋を悪寒が走った。


「名前」
「はいぃいいいっ!」

ビ、ビビビ、ビビったぁ…!いつの間に伊作さん俺の背後に…?!
笑顔が怖いんですけどっ!純粋そうな柔らかい笑顔が、文次郎の話の後じゃ見せかけとかカモフラージュとかにしか見えないんですけどっ!

「あ、文次郎も。久しぶり」
「ああ。お前は変わんねぇな…」
「時を超える愛だよ。大丈夫、あの頃よりは大人だから。盗撮しても観賞だけにするよ」

え、何これ。目の前で交わされる会話がスルーしても大丈夫な部類かわからない。主に俺の身が大丈夫かわからない。
盗撮は犯罪です、は当たり前として。写真って観賞用以外に何か使用用途ある?え、ないよね?ないよなぁ?!
そしてまさかとは思いますが、対象は俺じゃないよね…っ?!

「名前…頑張れ」
「やっぱ俺なのぉおお?!嫌です、頑張りたくありませんっ!」
「名前、よろしくね」
「絶対よろしくしたくない!」

とりあえず、挫折まで一週間ってとこか、とか呟いた文次郎を後で泣きながら殴ろうと思います。
今?今はこのストーカーから逃げるのが先決だ…っ!




お題:レイラの初恋様より

50000打リク:ストーカー伊作夢(花巻様へ贈呈)


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