男主短編 | ナノ




僕は切原君をとてもかわいい後輩だと、友人の柳生に接する姿を見て何となく思っていた。まぁつまり、一番近い接点で友人の後輩。たったそれだけだったわけだ。

そしてできればそのままの印象で卒業を迎え、それから一切の関わりなく生涯を終えたかったものである。


「名前先輩、聞いてる?」
「聞いてないふりしてる」
「はは!わっかりやす!」
「僕がわかりやすいなら切原君だってわかるだろう?さぁ空気を読んで今の言葉を撤回してくれたまえ」
「名前せんぱぁい、好きでーす!」

何をどうまかり間違ったか、放課後の教室といういかにもなシチュエーションで切原君に告白された。

…いやね、冒頭でも述べたように、僕と切原君は相当接点が無かったわけで。僕だって馬鹿じゃない。まず最初に罰ゲームの線を疑った。でも好きです、の後に――

「最初は柳生先輩に真面目に付き合えるのなんてどんな人だろってぐらいの興味だったんすけど、見てるうちに横顔綺麗だなとか、首んとこ色気感じるなとか、声だけで勃ちそうとか、そういう事ばっか考えるようになっちゃって、気づいたら超好きでした」

こんな明らかに危険な発言(主に声だけで勃ちそうってところ)をされたら信じざるを得ないより前に身の危険を感じた。現実逃避したくなった。

さて、僕はどうしたらいい。こいつこのまま放っておくと犯罪に走りそうで真に頂けないぞ。
…よし。あまりやりたくない作戦だが、ここは目には目を、歯には歯を作戦と行こう。僕は役者だ。イケる。奴を食い殺す気で行くぞ。すぅー…はぁ…レッツスタート!

「まぁ待ちたまえ、切原君。僕は紳士の友人なんてやっているが、この実まったく紳士ではない。例えば君が此処で服を脱ぎ出したら愛が無くてもうっかり襲ってしまいそうなぐらいさ」

ふぅ…これぐらい言えば引いてくれるだろう。まったく、切原君も僕――ばさり――の手を随分と煩わせてくれ…ばさり?


「脱いだら欲情してくれんの?」

上半身裸で下の制服にも手をかけながら、中学二年生とは思えない妖艶さで笑った切原君に、僕は表情を笑顔のまま固定させられた。

すみません、嘗めてました。

「欲情とかそういう言葉を中学二年生が使うんじゃありません。ほら風邪引くから服着なさい」
「今更紳士ぶるなよ。襲うんじゃなかったわけ?」
「嘘も方便ってやつだよ、嘘!」

こいつ、僕の想像を上回る強者だった。僕はこれ以上変態発言はできないぞ…。これでも柳生の友人を二年以上やっているんだ。少なからず影響を受けている。

「切原君、それにしても自分の身体もっと大事にしろよ。僕さっき、ポーズとはいえ愛が無くても襲うって言ったんだぞ?」
「だってそれで既成事実作ったら、名前先輩逃げられないっしょ?」

無邪気に見えて邪気だらけな笑顔を浮かべる切原君はまさに悪魔だった。


お題:mess様より


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