男主短編 | ナノ




(※男主、BL)

昼は学校行って、テニスして、女の子と遊んで、騒いで、…そうしていれば楽しかったし、気が紛れた。
あっくんに似合わねぇな、なんて言われた家庭環境は、別に嫌なわけじゃない。単純に言えば、ただ両親が物凄い放任主義ってだけだし。

ただたまにどうしようもなく寂しくなって、顔も名前も知らないその辺の女の子でも引っ掻けようと、夜中に誰もいない家を出る。
こんなことが月一ぐらい。
そう、ただそれだけなんだ。

街を歩くとかわいい女の子が数人の男に絡まれているのが目に入った。いつもなら真っ直ぐ女の子を助けなきゃ、と割って入るんだけど、今日は喧嘩でもしたら気も紛れるかな、と彼女達に近寄った。
動機はまったく違うのにやることは同じなんて、笑える。我ながら歪な笑みを浮かべて、口より先に相手の男の一人を殴った。
脳の隅の冷静な部分では、テニス部とか大会とか色んなことが浮かんでいたけど、すぐにもっとぐちゃぐちゃな思考に塗り潰された。



気づけば俺も男達も地面に転がっていた。
痛くてどうしようもないというほどでもないけど、擦り傷と打撲が所々。でも、俺一人でここまでやったんだから凄いんじゃない?ただ、酷く気だるくて動けないから困ってるけど。

「何やってんの?」

いつの間にか、夜なのに街灯に光っていやに眩しい金髪の男が俺を見下ろしていた。
こんな明るい金色の髪、初めて見た。俺も人のこと言えないオレンジの髪だけど。
それにしても、こんないかにも喧嘩してましたな状態の俺に声をかけるなんて、変な奴。

「倒れてるんだよ」
「うん、そんな感じ。楽し?」

そっちこそ何が楽しいのかへらへらと笑い俺の近くにしゃがんだ金髪の男に、俺も起き上がって視線の高さを合わせ、へらへらと笑い返す。

「ちっとも」
「あ、やっぱり?じゃあさ、俺と一緒に遊ばない?」

猫のようにふにゃりと笑った金髪の男に、俺の心臓が暴れだした。
俺の髪色は気に入ってはいるけどオレンジだし、喧嘩なんてしてたんだから不良だと思って関わらないでしょ普通。金髪よりずっと明るい髪に目を奪われ、彼自身が光っているようにさえ見える。
天使、ううん…ヒーローだ。俺を助けに来てくれた、ヒーロー。

「なんで、来てくれたの?」
「何で?うーん…」

ヒーローはひとしきり唸った後、思いついたとばかりに俺の髪をくしゃりと触った。
自分の心臓の音が煩い。ヒーローの触ったところから熱が広がって、のぼせそう。

「オレンジとホワイトゴールドって、運命だと思わない?」

ふにゃり。

…もしかしたら、とっくに恋には落ちていたのかもしれない。まいったな、俺女の子が好きだったんだけどなぁ…。
俺の答えを待つようにじっと見てくるホワイトゴールドという色らしい髪色のヒーローに、俺が返す言葉は当然決まっていて。

「…思う」
「だろ?じゃあ今からお前友達ね!あ、名前名乗らなくていいから。んー…あだ名は、そうだな…太陽でオッケー?」

太陽?ああ、髪色かな。昼間の俺ならともかく、今の俺はあんまりそうは見えないだろうし。
頷いた俺にヒーローはふにゃりと笑って、

「あ、俺の名前も適当に呼んで!好きにあだ名つけられんのって、結構楽しみなんだよ」

俺だけにこんなことをしているわけじゃないのか、と若干胸が痛んだけど、ヒーローの期待するような眼差しを見ていると、どうでもよく思えた。
だって、これからいくらでも親密になれる可能性はある。俺はラッキー千石。運は人一倍強いんだ。
それにしても、あだ名どうしようかな。ヒーロー、じゃそのまんまだし。…俺が太陽だから、それなら、


「じゃあ、月」

だって貴方は、俺(太陽)の夜を丸ごと食べていったヒーローだから。


企画:永遠ヒーロー様提出


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