男主短編 | ナノ




ぶっちゃけ綾部喜八郎の顔面は非常に卑怯だと思う。

綾部とかさ、マジあの顔面でさえなければただの電波で穴掘りまくってる変人だろ。それがあの超都会的イケメン顔で全て帳消し、いやプラスになる世の中が憎い。
ちくしょー、何だあの顔。表情変わんねぇなおい。てか目合わないな。こんなに見てんのに気づかないのか。俺なんか興味もねぇってか、さすがはい組様だ。けっ。
あれ、本当動かないな。まさか寝てんのか?目開けたまんま寝てんのか?外で?…どうしよう、ちょっと心配になってきた。膝掛けぐらいかけに行ってやろうか。そんな義理はないが、ここまでガン見しておきながら今更見てみぬふりはちょっと人としてアレだよなぁ。うーん…。


紹介が遅れたが、綾部喜八郎が蝶を観察しているのかはたまた雲を見ているのか、視点を斜め上に固定して人形化しているのを四年は組の教室から見下ろしている俺は、極一般的にイケメンを妬んでいるフツメン忍たまである。名を苗字名前と言う。

「あ、平が綾部に近寄った」
「何その独り言。名前は平のストーカーなの?それとも綾部のストーカーなの?」
「おう友人。どっちも違いますぅ」

平が綾部に話し掛けているため、膝掛けは掛けに行かなくていいな、と自己完結しているとは組の友人にあらぬ誤解をかけられた。

「平とは、あれだ。たまに無駄に自慢話を聞かされて超うぜー。い組うぜーと思う関係」
「極一般的な平の認識だな」
「綾部は、たまにすれ違い様顔面目掛けて思わず唾を吐きかけたいなと一方的に思ってる関係。綾部は多分俺の名前も知らんと思われ」
「お前、くのたまに殺されるぞ」

友人は色々と言いたそうな顔をした後、全てを集約するようにただ一言そう言った。
俺はそれにいかにもやさぐれてますな雰囲気でけっと葉巻を吸うふりをした。

「何お前そんな綾部嫌いだったの」
「…綾部が好きか嫌いかと聞かれればそれは嫌いだが、限りなく普通に近い嫌いだな」
「つまり?」
「あんまり興味ない。でもあの顔面は卑怯なのですれ違い様以下略」
「お前立花先輩に殺され、」
「二度と言いません」

立花先輩怖いです。長いものには巻かれて生きていきたいです。




「どうした、喜八郎。いつにも増してぼーっとして」
「今、名前がずっと僕のこと見てた。えへへ」
「…毎度のこと、苗字が絡むと喜八郎は倍かわいくなるな」
「えへへ」


お題:baby pink様より



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