男主短編 | ナノ




「跡部様ー!」
「アーン?マネージャーか、どうした」

跡部様のクラスに顔を出してその名を呼べば、跡部様は指をくいっと曲げるだけで俺をクラス内に招き入れる許可をくれた。俺はそれに甘えてひょこひょこと跡部様の前に行って、ちょうど空いてたからその前の席を借り椅子の背を跨いで座った。それから流れるように、無遠慮に跡部様の机に手に持っていたプリント二枚を広げて跡部様を窺う。

「次の交流試合なんだけど、相手校こっちとこっちどっちがいい?俺的にはこっちがお勧めなんだけど、最終的に決めるのはやっぱ跡部様かなって」
「今更テメェの判断力疑う気はねぇよ。お前がそう思うならそこにとっとと申し込め」
「…見もしないで決めていーの?跡部様、が」
「……いいんだよ、テメェが裏切らねぇ事ぐらいこの俺様のインサイトが見破れねぇわけがねぇだろ」
「そりゃそうだ」

頬に赤みが差すわけでも無く、ただ少しは照れたのか視線を微妙に逸らした跡部様に俺は屈託無く笑った。
確かに俺は絶対に跡部様を裏切る事は無い。それが落とし穴なんてアンタは最後まで気づかないだろうし、俺の全てに誓って気づかせやしないけど。

「俺の事信じてくれてんだー、いひっ」
「気持ち悪ぃ事言ってんじゃねぇ。用はそれだけか?」
「あ、待って待って。あるある!」

不機嫌に鼻を鳴らした跡部様に、俺は慌ててその手を両手で掴んだ。

「…テメェは犬か」
「跡部様の犬ならいーよ!」
「…俺が窓から飛び降りろっつったら本当に何の疑問も持たずに聞きそうだな」
「聞いちゃうかも!」

跡部様は呆れ顔で俺の手を振り払うと、代わりにそれこそ犬を嗜めるようなおざなりな手つきで俺の頭を撫でた。俺はそれにへらっと笑い返す。気分的にはしっぽぶんぶんだ。

「でさ!要件なんだけど、今度跡部様の家遊びに行きたい!」
「アーン?何だ、飯か?それとも前レギュラーで来た時みてぇに特大スクリーンで映画でも観てぇってか?」
「違うー。跡部様の部屋で跡部様と二人でただ話したい」
「…」
「ダメ?」

しょぼんとしながら顔を覗き込むと、跡部様は溜め息を吐いた。俺は遠回しな了承に歓声を上げる。

「何が嬉しいか知らねぇが」
「跡部様のプライベートスペースで二人っきりを許可されたのが嬉しい」

耳を済ませていたかいあって、跡部様が呼吸を止めた音が僅かに聞こえた。俺は口元を手で覆い見えないようにしてから、にぃっと悪どく笑んだ。

「俺、跡部様大好きだからさ!」

笑顔で本心から言えばまたアンタは俺を信じてくれる。大丈夫、俺はどう転んだってアンタを幸せにする。そんで俺も幸せになる。

跡部家の長男がまんまと男に絆され騙されて同性愛。それも共依存に陥り、駆け落ち失踪。
そんな完璧な俺の未来計画が他人の目から見てどう映るかなんて知らないけど、跡部様自身に不幸だって思わせなければそれってハッピーエンドでしょう?

ーーー
某夢サイト管理人な友人とのオフ会お遊びゲーム企画C
指定:跡部様、自分が思い通りに動かしてるつもりで主の掌で踊らされている、メリバ

跡部様は上に立つ責任を十二分に理解している人なので、信頼とかそういう問題じゃなく何事も自分でも確認した上で判断されると思います。なのに(自分に)言い訳までして依存したいと思ってる時点で、計画の成功は目に見えてますね!
跡部様が恋心自覚して呼び方やめろって言ったらもう落ちるだけ。



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