男主短編 | ナノ




※雷蔵先輩超病んでる




四年ろ組保険委員、苗字名前。最近僕は、好きな人が出来た。
町のお花屋さんの看板娘なあの子。かわいくて仕方が無い。週一で行きたいところを二週に一辺で我慢している。

しかしこの恋は忍術学園の誰にも知られてはいけない。何故なら僕はとても不運な事にとある頭の螺子を一本外してしまった先輩に好かれているからだ。


「名前、好きだよ」

後ろから聞こえた声とその発言は、悲しきかなちょうど今話していた渦中の人物だ。

「ありがとう、ございます」

僕はいつも通り青ざめ引きつった顔で、遠回しなごめんなさいを返した。
出来れば僕は、普通な恋愛がしたいんです。そこに恐怖とか緊迫とか流血とか、そういうスリリング体験は求めてなくて。そういうあれは、伏木蔵とかが好きなんで。

「今日も駄目かぁ」
「とりあえず不破先輩には、愛と殺意を混合するのやめて頂きたいですね」
「それはちょっと無理かな」

そう言って不破先輩は話の内容と真逆と言っていい程爽やかに微笑んだ。

先輩の思考が少しおかしいのは仕方ない事では、ある。
僕は不破先輩が恋人に手酷く裏切られ衝動のままに殺し、それにより余計自分の中で愛憎を消化出来なくなった様を偶々、本当に偶然に目撃したから。頭の螺子はあの時外れて、不破先輩を裏切った恋人さんの腹部に落として来てしまったんだと思う。仕方ない。

しかし、愛の対象が僕になってしまうのなら話は別だ。
僕は特別寛大な心を持ち合わせてもいなければ、自傷願望もないし、もう夜這いで突然首締められた瞬間アウトでした。いっそ、人生で一番不安定だったであろうあの時の不破先輩に優しくした事さえ後悔しました。あれで絶対僕好かれたんだよ、わかってるんだよ。
それに僕、冒頭の通り好きな人出来たんで。

「あれ、雷蔵……と、誰だっけ?あ、そだ!雷蔵の恋人の、名前君!」
「名前は合っていますが恋人じゃありません、尾浜先輩」

通りすがりの尾浜先輩に声を掛けられたので、死んだ目で訂正した。

「え、本当に?うっそだー」

からかうように笑われた。解せない。僕はいつも正直に生きているんですが。

「ごめんなさい、僕それなりに生存本能あるので殺害同意契約を結ぶのはちょっと」
「いっつも一歩前でやめてるのに」
「本当に一歩前ですよね。微かな加減間違いで殺される未来がありありと想像出来ます。死にたくないです」

僕被虐趣味も無いのであの血の気引いて頭の中空っぽになる感覚好きじゃないんですよね、はい。

「あはは!雷蔵達って本当仲良いよね。恋人じゃないって信じられないなぁ」
「僕は今の会話を聞いて仲が良いと判断した尾浜先輩が信じられませんが」

堂々とした殺人未遂話だったはずなんですが。勝手に脳内補完して冗談のじゃれ合いと解釈するのやめていただけませんかね。尾浜先輩だけじゃなく、一人を除いた五年の先輩方全員の話ですけど。
どうやら五年生は頭の螺子落とす前の正常で優しかった不破先輩の印象が強いらしく、さらっと危険思考を口にする不破先輩を冗談言う事増えたよねー程度に認識しているらしい。
その無意識に僕に全ての厄介事と死亡フラグを押し付ける思考回路なんて爆発して欲しいところです。

ああ、なんて話してるうちに向こうの長屋の後ろの木の陰に此方をこっそりと窺う鉢屋先輩見ぃつーけた。
五年で唯一全部知ってる癖に見て見ぬふりする薄情者め。別に僕が死ぬ時鉢屋先輩も道連れにするからいいですし。構いませんし。

「あ、でも雷蔵と名前君恋人じゃないなら、もしかして名前君の恋人って町のお花屋さんだったりする?この前楽しそうに話してるの見たんだよね」

…。

見事な地雷です、本当にありがとうございます。
突然予想外もいいとこな僕の好きな人の話に、止める間もなく赤くなる僕の顔を不破先輩がハイライトの無い目で射抜く。

「大丈夫、名前の事は殺さないよ?ちょっとしばらく閉じ込めて…後、邪魔者は消すけど。いいよね?」
「い、いえそれは…」
「いいよね?」
「…」

肯定しか受け付けない質問の意味はあるのか。半ばどころか完全に苛立ち千パーセントで脅してくる口元だけ辛うじて笑っている不破先輩に、僕は終わりを悟った。

境界線完全に越えちゃったんですね。あー、涙ぐんできた。
尾浜先輩、またまた冗談言ってーな顔本当やめてくださいぶん殴るぞ。そして鉢屋先輩のあくまで遠くから憐れみの視線を送るのがうっざいので爆弾を贈呈です。

「ふと思い出したんですけど、僕そういえばこの前鉢屋先輩に犯されかけマシター」

物凄い勢いで、は?!と僕を見た鉢屋先輩ににっこりと微笑みかける。絶望の笑みである。宣言通り巻き添えです。

不破先輩は鉢屋先輩の始末さえ楽しむんでしょうね。先輩の殺意と愛は表裏一体らしいですからね。大好きな親友をその手に掛ける理由が出来てさぞ嬉しいでしょう。
さてと、僕は二人の戦いで鉢屋先輩が勝利してくださるのを祈りながら、少し疲れたので、崩れ落ちてもよろしいですよ、ね…?これでも精神ズタボロで、本当は大声でやだやだと泣きはらしたい、の、で、……。


200000打お礼フリリク、ぴゅーり様へ


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