男主短編 | ナノ




※現パロ
※勘ちゃんヤンデレひどい




世の中には知らなくて良いことってね…あると…思うの。

「あ…!名前、あのさ、今日呼び出したのは…その、言いたい事が……お、俺と結婚してくれま、間違った!!結婚を前提に付き合ってくれませんか?!」

目の前で耳を赤くしながら綺麗に90度のお辞儀をかましてくれたこの男。そりゃ知ってる。
尾浜勘右衛門。この平成の時代にかなり時代を感じる名前だし。同じクラスだし。何より尾浜人気者で顔も頭も良い明るい奴だから目立つし。女の子にいっつもキャーキャー言われてるし。
何で俺で、あえて男に走った。とか、罰ゲームにしてはいつもの尾浜の余裕皆無だし真っ赤だしねぇよな。とか、日本に居る限り結婚は無理だろう。とか、色々と思うところはある。

が、俺が世の中知らなくていい事もあると思ったのはまったく違う点である。


話は三十分前に遡る。
俺、靴箱に入ってた名前も書いてなかったけど校舎裏呼び出しのどう考えてもラブレターな手紙に有頂天になって、三十分も早く指定の場所来て隠れてドキドキしながら待ってたんだよね。おいそこ、さすがモテない男子とか言うな!語尾にかっこ笑いつけんな!
でね、するとそこには緊張した面持ちの女の子が一人居りまして、結構可愛い子でテンション上がりまして、よし出て行こうとした時尾浜が現れ何故此処で尾浜?!と驚いた俺は混乱して咄嗟に隠れたんですよ。

「ん?君、こんな所で何やってんの?」
「え、っと…」
「あはは、嘘々。知ってるよ。名前の事待ってるんでしょ?告白する気なんだよね?」

あ?何で尾浜がそれを知ってる…?動揺した女の子の様子から女の子が言ったんじゃないだろうし、俺誰にも話してないし。え、本当に何で?

「何で…」

よく俺の気持ちを代弁してくれた可愛い子。
と、この時は思った俺だが、三十分後にはあー何も聞きたくなかったと絶望の顔をしているのであるが。

「名前の靴箱は毎日チェックしてるから。身の程知らずにもラブレターなんて入れてくれちゃってさぁ?その場で破って棄てても良かったけど、丁度いい機会だし君の代わりに俺が告白しようと思って」
「尾浜君、何言ってるの…?」

うん、本当にそれ。尾浜何言ってるの。笑顔で楽しそうに語っていらっしゃるけど、全然話がちんぷんかんぷん。

「あったま悪いなぁ…」

ごめんなさい…っ!
…くっ、なんて事だ。いきなりの尾浜の冷めた顔と低い声にびくつき、頭の中とはいえ条件反射で謝ってしまった。
それにしてもこの尾浜ってあの尾浜?髪の感じとか顔とか制服の着崩し加減とか完全にあの尾浜なはずなんだけど、尾浜ってこんな絶対零度の凍てついた見下すような目で人を見るような奴じゃ…なかったような…。鳥肌止まらん。

「失せろって、言ってるんだよ。それとも実害示さないと分かり合えないかなぁ…?その綺麗な髪の毛でも切ってあげようか?ああ、切られるのは別の所がいい?」

ポケットから大きめの、裁ち鋏ぐらいの大きさの鋏を取り出した尾浜は、口元に薄い笑みを浮かべながらまったく笑っていない目で女の子の髪の毛をそれはもう優しく、尾浜の顔見えなくて音声無しなら口説いてるとしか思えないような手つきで掬う。女の子はまるでその手から逃れるように腰を抜かした。

「ひ、ぃ…っ」
「俺、名前の事愛してるだけだからさぁ…俺と名前に二度と近寄らないならまぁ、初回だし今日は許してあげるよ。次無いから。ほらさっさと行けよ」
「っは、ぃ」

がくがくと震えながら、半ば這いずるように逃げて行った女の子に、現実逃避でぼーっとしていた俺は五分程そうしていてからふと気づいた。
やば、逃げるタイミング逃した…っ!お、俺も逃げたい!女の子待って置いてかないで!!もうスカートの裾さえ見えないけど!

尾浜に動く気は無いようで、てか本来なら女の子に呼び出された俺を待っているらしく校舎にもたれかかりじっとしている。
なので、俺は仕方なく細心の注意を払いつつその場を離れようとした、のだが…ホラー映画よろしくうっかり音を立ててしまい尾浜に見つかり、冒頭の尾浜によるプロポーズに戻る。
うん、もちろんこれプロポーズと書いて脅迫と読む。尾浜のポケットの中に怖い鋏入ってるの俺知ってるし。てか鋏大きいから持ち手の部分は外から見えてるし。こんにちはそのまま出て来ないでくださいだし。断った時、俺もあの女の子と同じ立場になるんでしょう…?イエスorはいってやつですね、わかります。

「名前…?」
「はいっ!まだ生きてます…っ!!」

しまった本音のような意味不明な返しをしてしまった。いや尾浜の方が色々意味不明だからその辺はあまり考えまい。
とりあえずは尾浜の目の色が暗くなってどよんと俺を見てる気がする方が問題だ。これは放っておくと俺はぐさりだ。
よし、今はまず俺が今殺されない道を選ぼう。俺ってば賢明なんだよ、はは。空笑いが…止まらないなぁ…後、冷や汗も。

「け、結婚とか置いておいてさ、とりあえず付き合ってみよ。うん!で、それからお互いの事よく知って、結婚とか考えよ?な?!」
「うん!わかった!」

俺の渾身の作り笑顔(絶対引きつってたけど)に、尾浜は気づいてないようで嬉しそうに返事した。
こうして、俺は尾浜も恐らく知らない所で強迫観念に囚われ恐々仕方なく尾浜と付き合うという事となった。
俺は本当はこれ以上尾浜の裏の顔知りたくないんだけどね…っ!

誰か、誰でもいいから俺にヤンデレの正しい更正方法とか、相手に恨まれず上手く自然消滅出来る方法とか、助言をください…!!


プロポーズ?脅迫じゃなかったの?


そんな名前君の考えに対するK.O君の供述

脅迫のつもりだよ?だって全部わざと見せたし。
付き合っちゃえばどうとでも出来るもん!ね?


お題:ライフル様より


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