男主短編 | ナノ




名前さんは一人だった。

独りじゃなく、ただそうあるべきが自然のように異彩を放ち、孤高の存在の象徴というようにいつも一人で、俺はその他大勢と同じように焦がれ崇め慕いながらも、彼の中のたった一人になりたいと願った。
同じような事を考えた輩を蹴落とし排し、いつも彼の後ろに付いて回る内、俺は名前さんの舎弟と周りに認識されるようになった。当然、名前さんにそんな気は一切無いだろうけど。

「なぁに、名前さんに近づいてんの?」

にぃっと笑いながら、名前も知らない男の後頭部を踏み付けた。男の頭から流れた血が靴を汚す。あーあ、きったないなぁ。名前さんは血とか気にしない人だからそこはいいけど、俺ってわりと綺麗好きなんだよね。
兵助が小綺麗なイメージあるから俺はあんまりそんなイメージ無いみたいだけど…いや、でも実は俺よりアイツの部屋の方が汚いからね。兵助は掃除はするけど収納下手だから。
部屋といえば、名前さんの部屋、行ってみたいなぁ。

「ぅ、ぐ、許し、」
「…は?今せっかく名前さんの事考えてたのに、邪魔しないでくれる?」

頭から足を退かし、代わりに腹を思い切り蹴り飛ばした。男は数回盛大に咳き込み、それから吐いた。こんな汚物男、名前さんの視界にも入れたくない。
ああ、名前さん好き。すきすきすきすきすきすきすきあいし、てる。例え貴方が俺の事なんて全然興味無くても。


学園に戻ると、門の前で名前さんが、大荷物を抱えて小松田さんと話していた。小松田さんは寂しそうに泣いていて、名前さんは笑ってる。
あれ?あれ?あれ?つまり、どういう事…?
気づけば汚物の血に汚れているのも忘れてよろよろと名前さんに近づいていた。

「ん?」
「あ、あの、すみません汚くて、俺、名前さん、あ、あ、あ、」

言いたい言葉が出て来ない。違う、聞きたくない。でも、そのまま見送りたくもない。俺がそんなどうしようもない思考で目を回していると、名前さんは手を一度叩き笑った。

「…ああ、そうか。君は一応友人だっけ」

本当は小松田さんとの話で聞こえていた。父親が倒れたから退学して実家を継ぐって言葉。親しい人なんて居ないから先生以外誰にも言う必要は無いって言葉。

「さようなら」

もう一生俺と会わない事を決めつけ、それに感情さえ含ませず、彼は微笑んだ。俺の表情なんて確認さえせず俺の隣を通り過ぎ行ってしまった。

強者の特権のように、容易く、貴方は俺を壊す。


お題:√A様より

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※夢主は最初から忍者になりたくもなければ気の許せる友人も出来なかったから、こんな学園辞めてやるんだぜ!って退学した系アホ


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