男主短編 | ナノ




俺は綾部喜八郎を初めてこの目で見た時、戦慄した。

「もう俺の理想の外見。好み直球ど真ん中。あああいっそ綾部からの愛がなくてもいいから是非一夜を共にして欲しい。しばらくきっと幸せに生きられる気がする」
「性別は?」
「気にならない程度にはあの外見ガチ凶器」

幼馴染みな雷蔵は自分から聞いてきたくせに、無表情でへーともうまるで興味が無さそうに一言返してきた。
自己紹介が遅れた。我が名は苗字名前。五年は組の保健委員である。ちなみに保健委員となった理由は非常に不純であり、それゆえにか保健委員でありながら不運ではない。ちょっと綾部が怪我した時血を舐めたいなとか、その程度なのに。消毒の際に痛がらせるの楽しそうだなって、その程度なのに。

「名前ってさ、」
「おう、何だ友よ」
「綾部の外見しか褒めないよね」

俺は真顔の雷蔵をきょとんと見返した。
何ということだ、これはお前の綾部への愛なんて所詮その程度なんだろ、ぷぷ。という雷蔵からの挑戦に違いない。

「別にだな、綾部の他の部分に興味がないわけではないぞ?全て統合して俺の好きな綾部なんだしな?」
「じゃあ他の話は何でしないの?されたらされたでうざったそうだけど」
「綾部の外見に対する愛が突出し過ぎた結果だ。もう可愛すぎて薬盛って押し倒して嫌がる綾部押さえ付けて口付けて口内から犯して睡液がピー――舐めて、泣き出した綾部のピー――もういっぱいいっぱいで綾部が何も考えられなくなったところで畳み掛けるようにピー――ピー――ピー――――――」
「正直引いた」
「ちょっと自重しなさすぎたとは自分でも思った」

俺と雷蔵は真顔で視線を交わした。
俺が雷蔵と共に微妙な気分でいると、突如背中に衝撃が走った。てか重い。
これは…鉢屋だな。雷蔵と幼馴染みなせいでちょいちょい嫌がらせしてきやがるからな。まったく、俺は綾部が好きなんだと何度言ったらわかるんだ。

「鉢屋どけー」
「鉢屋先輩じゃありませーん」

その声に、俺はぴしりと固まった。


「ぅえあ、あああ綾、綾部、え、うわぁあああ!」
「…先輩って、僕のこと嫌いですか?」

いやむしろもう好きすぎて吐きそう。吐く。ぅおえっ。
いきなりの顔面直視は心不全的な意味で死の危険があります。

「じゃあ名前、僕行くね」
「雷蔵、綾部と二人きりなんて俺を殺す気か」
「僕は先輩好きなのに…」
「あ、死ぬ。マジで死ぬ。雷蔵たすけ、」
「じゃあね」

友情とは何て脆いものだろう。
振り返る事なく去りゆく雷蔵の背中に、俺は強くそう思った。

さて、当面の問題は背中の綾部だ。今背中に綾部が居るとか、考えただけで色んなとこから血が出そう。
てか、何なの綾部。急に後ろから抱き着いてきて好きとか俺をきゅんきゅんさせてどうするの?襲われたいの?心配しなくてももう止まれないぐらい綾部への愛で俺は構成されてるし、脳内でいつも…以下、自重!

「先輩も、僕を好きになって」

いやだからもう好きすぎてどうしたらいいかわからな――え?
急に綾部の手により横を向かされた俺は、突然の綾部の顔のドアップに色んな機能を停止させた。

てか、今の何?ちゅーですか?俺、綾部とちゅーしたんですか?

「…もう好き、だよ」

綾部の少し赤くなった顔での珍しい可愛すぎる笑顔に、俺は思わず呟いて、もう一度その顔を引き寄せた。

ああ、やっぱり綾部が世界で一番可愛い。



むしろ見つける気もありませんけどっ!


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