男主短編 | ナノ




はぁい、皆さんこんにちは。今日は俺の走馬灯に付き合ってもらいたいと思いまぁす!

え、結末の決まってる話なんぞつまらん?まぁまぁそう仰らず。俺のちっぽけな生涯を笑い飛ばしてやってくださいよ。

え、そもそもお前は誰だ?えー…うーんと…大川忍術学園に通っている、一年い組の忍たま、かな?

え、俺の名前?うーん…そうだな、なら苗字名前としておこうか。

え、偽名かって?…そいつはそれこそアンタ次第ですよ。なんちゃって。



「名前!」

俺にとって伊賀崎孫兵という人は、誰より大切な存在だったわけですよ。

「名前の白髪は相変わらずアイツと似て綺麗だな!」
「銀髪と言ってください」
「そのまるで媚びない態度もそっくりだ!」
「それはどうも」

こんな感じで、俺の側にはよく孫兵君がにこにこ笑顔で来てくれて、俺は幸せだったんですよ。
一度として孫兵君が俺を名前と呼んでくれなくても、それでも俺は幸せだったんですよ。
俺は愛情表現の仕方なんて知らないけれど、俺が孫兵君を愛していたので幸せだったんですよ。

今日なんて、来なければ良かったのに。

「ぁ…」

完全なる、俺の不注意でした。
人通りのまるでない、俺の地元で孫兵君の地元の草原にて…目を見開く孫兵君に、俺も"それ"を手に持ったまま固まりました。

ああ、何故俺は今日、とうに死んだ者の亡骸の埋葬なんてしに来てしまったのだろうか。いや、もっと周りの気配に気をつけていればよかったんだ。
そうすれば、こんな奴のために孫兵君がそんな顔、しなくてよかったのに。

「お前が、殺したの…?」

違います。
確かに、そりゃ俺は、とうに死んだ奴を俺に重ねて孫兵君が喜ぶ姿に、不思議なことに少しだけ嫉妬しました。でも違います。

「ちが、」
「なんで、なんでこの子は死んで、なのにお前は生きてるの?!人間なんて嫌い!人間なんか、人間なんか大嫌いだ…っ!」

俺から最早骨だけの小さな元白蛇を引ったくった孫兵君は、泣きながら人間なんか、と繰り返した。
徐々に辺りに殺気が増す。どうやら俺の命もこれまでらしい。

さて、走馬灯のように回想してきたが、その間にいくら時間が経ったのだろうか?
…ああ、そこの誰かさん、確かに孫兵君はちょっと混乱して俺の生を否定したし、もうすぐ俺は勘違いによって間違いなく孫兵君に殺されるけど、孫兵君を責めてはいけないよ?

だって俺は、最初からかの白蛇の身代わりなのですから。





それではこの笑い話もそろそろお開きと致しましょうか。
お送りしましたは、もうすぐ死んじゃう現忍たま一年い組苗字名前――に憑依していました、名もなき白蛇でした。苗字名前君には、本当に悪いことをしましたね。まぁ、二度も殺される俺に免じて許してくださいな。

今、俺は本当は死んだ白蛇が憑依してるんだよなんて話したら、孫兵君さらに混乱しちゃうでしょう?うっかり自殺なんてされそうになったら、俺一年生だから止められないかもしれないし。人間様の思考は、いまいち俺にはわからないものですから。

だからごめんね、名前君。君は今、俺の心を持ちながらも苗字名前君として死んでくれ。


だって俺は、孫兵君以外の人間なんて、今の自分なんて、

大嫌いなんだよ。


主催企画:涙痕提出


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -