彼女は自殺したわけじゃない。だけど彼女は、生を諦めた。
生きることに、一切の執着を持てなかった。
ゆえに、彼女はあの時手を挙げた。
彼女は死を進んで受け入れ、俺には知り得ないがその後――
英雄となり、または悲劇のヒロインとなったのであろう。
絶賛三郎と逢い引き中である。
何だかんだで、仲睦まじい恋人同士(仮)だ。一見三郎だけが俺を好きで、俺はそれに付き合ってるだけみたいで、多分三郎もそう思ってて、俺がそうなるように仕向けた関係だけど。
「思ったんだけどさー、」
「うん?」
「三郎って俺のこと好きだって言ったじゃん?」
「な、なな何急に…!言った、けど…?」
一気にぼんっと耳までゆでダコのように真っ赤に染まった三郎に、かわいいなぁと思いつつもその感情はまったく外に出さず、真顔で口を開く。
「いや、何で好かれたのか謎だなって」
好かれるようにしたのは俺だけど、本人の口から聞いてみたい。あはは、何この考え。普通の恋人同士じゃん。
「わ、私のこと、よくわかってくれてるし、その、格好良くて、優しくて…」
「うん」
「それに、なんか私は愁矢のことずっと捜してた気がするんだ」
捜してた?俺を?
あはは、酷い勘違いだな三郎。お前が捜してたのは俺じゃなくてあの人なのに。
…お前はまた、間違えた。
「じゃあ運命ってことか」
「っ…うん!」
これもまた、俺とお前の運命。