全部認めて私になろう

夢を、見ていた。

最初に立花先輩と会った日のこと。まだ、私が本物の砂糖菓子だった頃の、こと。きっと戻れるってどこかでバカみたいに信じてたの。
伊作先輩の声、聞こえてましたよ。ごめんなさい、私がアナタを狂わせたんですよね。
今まで私が皆に言って来た言葉に、立花先輩の事を除いて嘘はありませんでした。でも、必要以上に皆に好かれようとはしてたんです。立花先輩には、出来ないから。その大きな存在の代わりに沢山の代用品。作り物のそれは、甘く、甘く。
溶かす事に罪悪感さえ覚えずに、被害者面して枕を濡らす日々。

最低。

こうして冷静になってみるとね、椿さんはやっぱり私の敵じゃない気がするんですよ。
だって、椿さんはいつだって私に優しかった。もし椿さんが私を嫌ったのなら、それもきっと私のせいなの。

これは過剰な自責なんかじゃない。
ただ、やっぱり私は一度好きになった人を信じたいだけ。好きな人には、本物の砂糖菓子で、居たい。

これは私の問題だ。
立花先輩には、頼らない。


「立花先輩、下がっていてください。話は私がします。立花先輩を椿さんが伊作先輩を使って傷つけたのなら理由はどうあれ目を離した私も悪いです。処罰が必要なら正式な場で、です」

初めてまた普通に話せた内容がこれなんだから、私はくのたまだなと真剣に事を考える端で少し苦笑。
持っていたくない、つまり立花先輩が取ろうとしたくないを懐に戻し、伊作先輩に蹴られたお腹を少し触る。…治療はしてくれたんだ。うん、イケる。
立花先輩が険しい顔をしながらも退いてくれたのに小さく頭を下げ、視界の端に居る敵意の見えなくなった伊作先輩に警戒はしつつも椿さんと向き合った。

「椿さん、あのね、ちょっと話しましょう。私立花先輩をああしたのが椿さんの仕業だったとしても、まだ本当はアナタの事嫌いになりたくないんです」
「…白雪ちゃんは、やっぱり強い子だね」

そう慈愛に満ちた、でも少しの羨望と嫉妬を感じる顔で言われ、私は安堵した。やっぱり、椿さんは私の敵じゃない。
私が強いかどうかは知りません。でも、本物の砂糖菓子っていうのは固く、触っても崩れず、けれど口の中では容易く甘くほどけるものなのですよ。

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