砂糖菓子の遭遇

もう、まったく逆の意味の言葉を発する口が欲しい。

最近巷ではツンデレなんてものが流行っているらしい。鉢屋君情報だからそれが真実なのかは甚だ疑問だけど。
好きな人の前だとツンツンしちゃうのがかわいい?どこが!どうでもいい人にはデレ十割で話せるのに好きな人には自動的にツン十割で接しちゃう私から言わせれば、好きな人にはかわいい姿だけ見てもらいたいに決まってる!

「ううっ…いっそ口を針と糸で縫いたいぃ…」

私は夜中の自室で枕に顔を押しつけながら泣いていた。これが日常と化していることが悲しく恨めしい。
何が用があってもらっちゃ困るだ。何が生理的に嫌いだ。会えて嬉しいです、立花先輩!って素直に言えばいいのに…私のバカァ!

「せめて普通に接せられればいいのに…」

ぶちぶちと枕に向かって零距離で愚痴る私を、私のファンだという人達や私を好きだという人達が見たらどう思うだろう?いっそ見られて皆から嫌われれば、私は何か変われるだろうか?
立花先輩にだけ嫌な態度を取る、最悪な私じゃ無くなれるだろうか?

立花先輩と会うと瞬間的に私を構築する全細胞が沸騰し、私の身体はそれを何とか冷まそうとするのか何なのか、気づけば勝手に嫌いだと口走っている。お陰で私は立花先輩が嫌いだという事を、学園中が知っている。違うのに。

「…すき」

口に出して、ほら簡単だと思うと同時にまた目が潤む。
何でこんな簡単な事が、人前だと出来なくなるんだろう。立花先輩にだけ言えなくなるんだろう。

ああ、もういっそ――

「強力なライバルでも現れれば、」

私ももっと焦って、素直になれるかもしれないのに。

「なーんて…」

そんなの負けるの確定だし、嫌だけど。

という私の言葉は最後まで続かなかった。
何故って、天井を突き破って私の部屋に猛速度で何かが落下して来たからだ。
一瞬、そのあり得ない出来事にくのたまらしくもなく無防備に呆気に取られてしまったけど、我に返りすぐ警戒態勢をとって叫んだ。

「曲者…ッ!!」
「っ痛ぁ!あ、待って待って!怪しいものじゃないのよ…!!」

どこからどう見ても怪しい空から降ってきた曲者は、南蛮の薄手の着物を身に纏ったとても綺麗なお姉さんでした。

「って、嘘。これトリップ?え…今更過ぎじゃない!もう此方はドリーマー卒業してるし就職も内定決まってうきうきの大学生だってのに…!」
「……気狂いさんでしょうか?」
「違うのー!ちょっとふわふわちゃん私の話聞いてー…!!」

がくがくと肩を揺さぶられ、仕方なくでも刃物の一つも向けずに綺麗な気狂いのお姉さんの話を聞くだけ聞いてあげることにした私は優しいと思う。
たとえ、それがお姉さんの筋肉と身体の造りを見て、いつでも相手の動きを封じられる程度には力の差があると判断しての結論だったとしても。

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