命懸けゲーム

「白雪ちゃーん…!たっだいまー!」

私が膳はとっくに片付けたけど椿さんを待って食堂に居ると、椿さんが食堂に戻るなり抱きついてきた。

「つ、椿さん?文次郎先輩と何かありましたか…?」
「ううん、別に」

予想と反して落ち着いた特に何でもなさそうな返しに混乱する。
え?え?どういう事?

「ただのホームシックよ」
「ほぉむしっく…ですか?」

そう、だからもう少し頑張らなきゃ!
そう笑った椿さんが何かに途方もなく追い詰められているような気がして、いつの間にか離れていた椿さんに思わず手を伸ばした。椿さんはすぐに気づいて、私の手を握る。

「…白雪ちゃん、あのね相談があるんだけど、ちょっと場所移動していい?」
「へ、はい。構いませんけど…」

そのまま私の手を引き、椿さんは私もあまり来た事の無いような忍たまの敷地内にある一つの小屋の前で立ち止まった。

「この中なら、あんまり人来ないはずだから」
「はい…」

監視の役割も引き受けている私といつも一緒に居る椿さんが、いつこの場所を知ったの…?それに、部屋じゃなくわざわざ此処まで来たって事はそこまで聞かれたくない話…?何だろう、見当もつかない。

「白雪ちゃん、実は私相談なんて一つもないの」
「どういう事ですか…?」
「うん、ごめんね?」
「え…?」

突然、椿さんが抱きついて来たと思えば、手拭いを鼻に押し付けられた。それが何でどういう意味かを理解する前に、世界が揺れる。
朦朧とする意識で解ったのは、私が椿さんを嘗めていた事と信用し過ぎていた事だけで。

ぶれた視界の中、椿さんが穏やかに何処か遠くを見るように微笑んでいるのを見たのを最後に、私の意識は途絶えた。



「…さてと、潮江君は上手くやってくれたかな?」

なんて、上手くやってくれないと始まる前に私が殺されてゲームオーバーなんだけど。
さぁ、もう後戻りは出来ない。逃げ道なんて、あったら前に進むのさえ尻込みして邪魔になるだけだ。

「本当、白雪ちゃんなんて大っ嫌い」

気を失っている白雪ちゃんのその綺麗な髪を梳きながら、いつもの調子で微笑んだ。

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