天女様と会計委員長

ああ、嫌だ。
自ら面倒事に突っ込むのなんて私らしくない。死んだら元も子もない。

その癖今の私が、私自身、嫌いじゃない。

「こんにちは。潮江君」
「…天女さんですか」

私に対しての忍たまの態度にしては比較的柔らかい対応に、私は努めて笑顔で潮江君を見た。

「私の名前、椿秋葉と言うの。出来ればその変な肩書きで呼ぶのはやめて欲しいかな」
「分かりました。では椿さん、私に何のご用ですか?」

うん、潮江君は実に大人だ。主人公にはなれないタイプ。
私、そういう人の方が好きよ。なんて、恋にはならないけどね。だって私、ちゃんと愛しているし愛されてる自信もある彼氏が居るんだもの。

「私ね、白雪ちゃんの事は大好きだけど実はもう早く元の世界に帰りたいのよね。待ってる人も居るし、会いたい人も居るの」
「それを何故私に?」
「これは推測だけど、私がこの世界に来たのは白雪ちゃんが関係してると思うの」

だって私の知っている物語に彼女は居なかったし、あんなに目立つ彼女が実は前から居ました新キャラですなんて登場するとも思えないし、私の落ちた場所は彼女の部屋で、彼女は大きな悩みを抱えていた。

「潮江君、立花君と白雪ちゃんに早くくっついて欲しいんでしょ?」
「…ええ」
「なら、私に協力してくれない?あの二人が付き合えば、私も帰れそうだから、その為なら何でもするわ」

潮江君は良い意味で大人だ。対して、私は悪い意味で大人。
嘘を吐かずに多くを語らず、悟らせず、悟っている事さえ見せず微笑む。

「…そんなに帰りたかったんですか?傍目から見れば、白雪と仲は良さそうでしたが」
「え、そう見える?嬉しいなぁ。かわいいよね、白雪ちゃん!私あの子大好きよ!」

自然と笑顔で話す私に、潮江君が明らかに困惑した視線を向ける。私はそれに笑みを薄らとしたものに変える。

「でも、それとこれとは別。私、とてもとても目が良いの。君達忍たまの殺気が無くても、殺伐としたこの世界はただ生きてるだけでストレスが山のようだわ。…何より、此処は私の居場所じゃない。良い事ばかりでは無かったけれど、やっぱり私の居場所はあの世界なのよ」

やっと幸せになれてきたところだったんだ。私が自分の力で手に入れた、築いた、幸せ。誰であろうとそれを奪われるのは我慢出来ないのよ。
ほら、私なんて確かに成人済みだけどまだまだ社会の荒波知らない大学生のお嬢ちゃんに過ぎないからね。

「で、協力はする?しない?」
「…内容に依りますね」
「賢明ね」

そして、この時点で私の作戦は大成功。ちょっぴり内側晒したかいがあったってもんよ!ふふんっ!

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