If番外:天女様をお姉ちゃん呼び

「よし是非ともお姉ちゃんと呼んでくれ」
「?いいですよ?」

私は椿さんなら、と了承した。この歳でお姉ちゃん呼びは少し恥ずかしいけど…でも椿さんは本当にお姉ちゃんみたいだから。

「え?」
「どうしました?」
「い、いいの?!アイアムシスター?!」
「あ、あいあ…?」

ちょっと聞き取れなかった。何て言ったんだろう?

「お、お姉ちゃんなら敬語も要らないよね!」
「あ、そういえばそうですね。敬語もなくていいんですか?」
「お願いします!」

何でそんなに輝いた目を向けられているのかは知らないけど、まぁお姉ちゃんがそうして欲しいならいいかな。なんか仲良くなれた気、するし。ふふ。

「お姉ちゃん、ご飯行こっか」
「っがは!」

お姉ちゃんが手で口元を抑えながらその場に倒れた。

「え?!お、お姉ちゃん?!どうしたの?!」
「ごめん何でもない破壊力ぱない変な道目覚めそ…しまった、心の声が!」
「あの、」
「大丈夫!さぁ胸は一杯だけどお腹を満たしにご飯に行こう!」

よくわからないままに、手を引かれて歩き出す。
引っ張られてるみたいなこの構図は、確かに仲の良い姉妹みたいだな、と人知れずその背中に笑いかけた。

「それでお姉ちゃん、今日の定食はAが唐揚げでBが鯖の味噌煮だけどどっちに、」
「白雪…っ!」
「あ、留三郎先輩こんにちは」

私がお姉ちゃんに問おうとした時、いきなり来た留三郎先輩に何故か必死な声で遮られた。

「ああ、こんにちは。それより白雪、今その女をお姉ちゃんとか呼んでなかったか?」
「はい。椿さん、なんか本当のお姉ちゃんみたいなんです」

照れ臭くなりながらも答えれば、留三郎先輩は傷ついたような顔で膝を折った。
私は驚き、慌てて留三郎先輩に近寄る。

「頼んでも俺は呼んでくれなかったのに…!」
「(何頼んでんだこの変態)」

後ろからお姉ちゃんが自分の事を棚上げて白けた目で留三郎先輩を見ているなんて知るよしもない私は、斜め下に視線を逸らしつつ弁解の為口を開く。

「だ、だって留三郎先輩は学園の先輩ですし…その…やっぱり恥ずかしいじゃないですか!」
「うっ…いや、でもならその女はどうなんだ?!」
「お姉ちゃんは先輩じゃないからいいんです…!」

それに、お姉ちゃんは留三郎先輩より年上だしなんとなく雰囲気が…お姉ちゃんっぽいし。

「…まぁ、仕方無いな。俺も行く行くはお兄ちゃんと呼ばれたら困る間柄になる気だし」

何かに納得したらしい留三郎先輩がうんうんと頷くのを首を傾げて不思議に思いながら見ていると、お姉ちゃんに早く行こうと神妙な面持ちで手を引かれた。

ちなみに私が椿さんをお姉ちゃん呼びし始めてからしばらくは、普段のお姉ちゃんに向ける敵意の視線が好奇や嫉妬、怪訝な視線に変わったとか、変わっていないとか。



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