天女様の悲報

私は人の感情には敏感だから、正直薄々感づいていた。
あれ、今さりげなく六年生避けたかな?とか、作法委員の近くには行かないようにしてる?とか、立花君を見た途端に腕を引かれ遠ざかる理由とか、考えたらね。

「そして何故にこうなった」
「私がお前と話してみたくてな。まぁ茶でも飲め」

これ見よがしに、お茶とお菓子が出された。目の前の美形はマイペースにお茶を啜りながらにやにしている。いつもならあらやだ目の保養ですね、と此方も少なからずにこにこなるのに、引き攣る。
何で私がいつも以上に朝早くから着物を着付けられ、立花君に作法室に連れて来られねばならないのか。しかも白雪ちゃんに無断で。

別に立花君が怖いとか、そういうのはまるでない。
私が怖いのは…白雪ちゃんとの関係が悪化する事だ…っ!!今でさえ死亡フラグ乱立してる気がして気が気じゃないのに!

「お前から見て、白雪華帆はどうだ」
「どう…皆に優しくて容姿もかわいいし、人気者ですね。努力もしていて、それに実力も伴っている」

うん、こんな状況じゃなかったら是非とも普通にお友達になりたかった。
私はやけになって出されたお饅頭に手を伸ばしながら率直かつ、大多数と同じであろう白雪ちゃんの素晴らしい評価を言うと、立花君に鼻で笑われた。

「お前、白雪から私の話を聞いたことがないだろう」
「…まぁ」

確実に触れちゃいけないことだと判断しましたからね。
私の答えに、何故か立花君は不適な笑みを一瞬残念そうなものに変えた。すぐにまた戻ったけど。

「そうか」
「……」

どうしよう、言っていいだろうか。
この人もあまり私を好きではなさそうだけど、他程嫌われてもいなさそうだ。てか、私と白雪ちゃんの確執の原因作りやがったし。
室町と平成が違う事ぐらい理解してるけど、確か立花君ってまだたかだか15歳とかそんなもんでしょ?年上のお姉さんを、あまり嘗めないで頂きたい。

「立花君って、白雪ちゃんが好きでしょ」
「…は?」

うわ、得体の知れない異物をなじる目で見られた。

「立花君、白雪ちゃんの事聞きたくて私を連れてきたんでしょ?」
「…少し気になる事があったからな。結果的に意味は無かったが。後は白雪への嫌がらせだ」
「へぇ」

何なの、この中高生みたいな恋愛のすれ違い。…ああ、二人ともその年頃だったか。
言っておくけど、恋愛スキルなら私の方が断然高い。どうせあれだ、立花君とかモテるし色やら床は巧いけど、恋愛したことはないんですよパターンだ。白雪ちゃんはあれかな、同じく相当モテてるしかわし方も理解してるけど、本命には奥手さん。
私の推理、あながち間違ってないと思うの。

「…何だ、その目は」
「あら?私ったらどんな目してるのかしら?ふふ、いやぁ立花君って他の忍たまともちょっと違う目で私を見るもんだから、つい?」
「…どういう意味だ」

もうあからさまに挑発するように言ってしまったが、立花君がキレて、うっかり殺してしまったよ、はは。となったところで、私は仕方ないなぁ、と言われるような存在だ。
でも、殺されない確信がある。私の世話係は、白雪ちゃんだ。

「またか、って目してる」
「っ…お前、くの一か」
「違うって。ちょっと目のいい、君より永く生きてる一般人。あれかな?白雪ちゃんが自分にだけ冷たいとか、きっとそ…」

年下相手にこの調子の乗り方。私も相当ストレス溜まってたんだな、という時、それは起こった。

襖開いた。

肩で息をする白雪ちゃん。

私の目の前には、立花君。
あれ、お前いつの間にそんな不適な笑みに戻った。

白雪ちゃんの目、怒っていらっしゃるような…?
えへへ。

私オワタ。

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