会計委員長の見解

くのたま五年生の白雪華帆が好きか嫌いかと問われれば、好きだ。あくまで後輩として。
俺が彼女を他の多くの男と同じように女として見ないのは…第一に恋愛など三禁だ。第二に白雪がモテ過ぎて逆に自分はそう見られない。第三に白雪を好きな奴等の異常性に引いている。

第四に、結局六年間ずっと同室となった友人が、彼女に惚れていたから。


…本人は否定するが。


「白雪の奴、相変わらずの頭脳だな」

白雪を好きな異常な人間の筆頭で友人の伊作と彼女の会話を聞いていた俺は、思わず口許に弧を描いた。
白雪は、努力のくのたまだ。だからこそ俺はアイツに好感を持つ。だが、体術や武器の扱いは努力だろうが、あの頭の良さはもっと前からのものだろう。

「性格が悪いだけだろう」

嫌そうにそう吐き捨てた仙蔵は、綺麗に飯を食うコイツには珍しくも鮭の塩焼きに箸を突き刺した。相当苛立っているらしい。
ただくのたまらしく自分も好意も利用しただけだろう。他の女だったら何も気にしなかった癖によ。

「…何だその失礼な視線は。文次郎の癖に生意気だぞ」
「俺の癖にって何だよ。お前があの天女に明からさまに嫉妬してるからだろ」
「はぁ?」

あり得ない、と馬鹿にしたような目で見られる。端から見れば完璧な演技なんだろうが、見慣れた俺からすれば食事を止めたどころか箸を置いた時点で動揺が見え見えだ。
平常心のコイツなら、まず澄ました顔で食事を続ける。

「俺はむしろ安心したけどな。白雪は人気な癖に誰とも一線引く奴だし。あそこまで護りたい相手が出来るとは」
「…文次郎、お前はあの天女をずっと疑っていただろう」

ああ。だから俺は、他の奴等のように個人的な理由で彼女を嫌ってはいなかったが、彼女の味方でもなかった。

「俺は白雪の目を信用している」

白雪は優秀なくのたまだ。白雪が自分の気持ちを置いて、くのたまとして信用にたる人物だと断言した以上、俺だって信じる。
無論、異世界から来たという話に関しては手放しに信じはしないが、悪い人間では無いんだろう。


「…私は、」

仙蔵は今まで誰より白雪を見てきた。
意識半ばに白雪を見る仙蔵は、何かを振り切るように目を閉じた。

「私はあんな奴、信用しない」

憎らしげに顔を歪ませた仙蔵は目を開け、白雪を睨み付けた。
それから興味を無くしたようにまた自分の膳に向き直ると、一口味噌汁を口にし、何とか聞き取れる声量でまた口を開いた。その表情に、俺は目を疑った。

――だって白雪は、嘘吐きだ。


その顔は、仙蔵が二年の始めにただ一度…部屋で大泣きしながら初めて俺に本音をぶちまけたあの時を思い起こされた。

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