とある三年生の心配

僕は白雪華帆先輩がすきです。ふわっと笑ってる姿に一目惚れしたわけですが、きっとそういう人は珍しくないのでしょう。
でも何より、僕はあの天女と呼ばれる人に悪感情を抱いたりとか、そういうのより、友人のことが心配で仕方ないのです。

「あ、藤内!三之助と左門見なかったか?!」
「見てない」
「はぁ…アイツ等何処に…てか、藤内一人か?」
「数馬のこと言ってるなら保健室だよ」
「ん?…あれ、今日当番だったか?」

訝しげに僕を見る作兵衛に、そういえば僕と善法寺先輩以外は知らないのかとため息を吐いた。
まぁ、今回の騒動で少なくとも保健委員会内には広まったけど。

「そっちじゃなく」
「は?」
「数馬が患者」

保健委員会といえば不運委員会と言われるぐらいの不運の集まりで、皆様々な不運に見舞われているけど、何だかんだで怪我はそこまでしなかったりする。
だから数馬が患者になるのは、普通の忍たまと同じぐらいの確率。体育や用具や生物委員より少ない。

「え、アイツ何かあったのか?!不運で落とし穴に落ちて怪我したのか?!」
「いや、僕が数馬のお腹に拳を」
「藤内さん…?!」

顔を蒼くして僕から遠ざかった作兵衛に、再度ため息を吐いた。お得意の恐怖妄想により、作兵衛の中で僕がどんな奴になっているのか。そしてその妄想よりさらに粗悪だろう真実を話さなきゃならないのが心苦しい。

「言っとくけど、好きでやってないからね。作兵衛は、去年の一月のこと覚えてる?」
「一月…ああ、数馬が不運で医務室の薬品かぶったやつか?」
「そう。全治二ヶ月ね」

あの時は大変だった。僕があの場に居合わせていてよかった。そうじゃないと気づかないぐらい、数馬のさり気なさは凄かったから。

「あれ、数馬わざとだったんだよね」
「……は?」
「白雪先輩に告白して、例のごとくフラれた結果がアレ」
「いや…悪ぃ、ちょっと意味がわかんねぇ」
「だからつまり、非常に残念なお知らせですが、数馬には自傷癖があります」
「えぇぇえぇえ?!」

混乱した顔で叫ぶ作兵衛に、去年の一月、僕が数馬に用があって保健室の襖を開けた時の事を思い出した。
中にいた数馬は僕と、それからすぐに来た善法寺先輩に気づかず、虚ろな目で薬品棚を開けて自ら薬品を被った。あの時は僕もこんな顔して叫んだのかな…。
後で理由を聞けば、白雪先輩に好かれない自分を律してるとか僕にはよくわかんないこと言うし。

「いっそ天女に向ければいいのにね。今回なんてくないで腕すっぱり切ったんだよ?」
「い…っ?!」
「今までもまぁたまにあったんだけど、白雪先輩の関連だと、数馬自制が効かないみたいで」

今までのは軽傷だし、それを知ってからは数馬が忍務で失敗した時とかに僕が気にかけてたからそう問題はなかったんだけど…うん、今回のあの目はこの先さらに何をしでかすかわからなかった。
とりあえず数馬を連れて保健室に駆け込んで、保健室内を狼狽させながら治療してもらったはいいけど、まだ数馬がいつも自傷する時の目が虚ろな状態のままだったから…気絶させて、特別なお香で眠らせてもらっている。

「医務室で眠ってた方が、僕は数馬のためだと思った」
「…そっか」

僕の自己満足かもしれないけど、だって数馬が自分を傷つけたって現実は変わらないし天女はいなくならないんだ。
作兵衛もどこか陰を落としながら心配そうに言った。
たぶん、数馬が自傷をただの不運に見舞われた結果に見せたり、隠したりするのは、僕達にこんな風に心配かけたくないからだろう。数馬は僕が世話を焼くたび、居心地悪そうにする。

「数馬のためにも、あの天女早くいなくなってくれないかなぁ…」
「…ああ」

別にあの人は大して悪くないけど?白雪先輩の隣に並ぶあの人に多くの忍たまが苛立っているのは事実。
だから、僕の友人がまた何かしでかす前に早くいなくなってほしいものです。

まぁ、暗殺計画の予習は一応しておきますけど。

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