とある二年生の憫笑

此処、大川忍術学園でくのたまの白雪先輩はアイドルだ。いや、違うかな。どちらかと言えばお姫様かも。
たいていの忍たまに聞けば、恋愛羨望友情様々だけど白雪先輩が好きだと答える。それぐらい白雪先輩は人気者だ。

「白雪ちゃん!」
「椿さん、どうしました?」

美女二人が戯れているのに、注がれる視線は一方への嫉妬、嫌悪、不満、やらまぁ色々。
かく言う僕は…白雪先輩への気持ちは恋愛感情じゃなく憧れだから、まだ冷静。天女が好きか嫌いかの二択なら、嫌いだけど。

「左近、何見て…ああ」
「三郎次の目、怖っ」

僕以外の忍たま二年生は皆白雪先輩に本気で惚れている。判断力を無くしてすぐ暗殺に突っ走りそうになる同級生を止めるのが、現在の僕の日常になりつつある。
まぁ、天女が嫌いなのは二年生だけじゃないけど。

「天女、うざいよね」
「四郎兵衛、バカ、出てきて早々キャラ崩壊すんな」

もう嫌だ、二年生。ちなみに久作は間違いなく図書室で危ない本見てる。
中途半端に純粋だから病むんだ。見た感じは五年ろ組の鉢屋三郎先輩の方が酷そうなのに。コイツ等、愛情の形が斜め六十度ぐらい歪んでる。
しかも前述の通り、問題は二年だけに留まらない。

「三反田先輩、もアレだけど…善法寺先輩」

深くは語らないけど、しいて言うなら保健委員内でも今の僕は随一不運な気がする。
いっそ誰でもいいから早く天女暗殺でも何でもしてくれないだろうか。僕の精神衛生のためにも。

「左近」
「何、三郎次?」
「四郎兵衛と一緒に、久作も誘ってちょっと天女殺してくる」
「バカ、やめろ」

僕は三郎次の頭を殴った。何すんだよ、と怒る三郎次に、僕は呆れた顔を向ける。
間違っても、三郎次が天女暗殺して欲しいという僕の思考を読んだわけではない。最近ではいつもこの手のことをアイツは言うし考えているだけだ。

「二年の出る幕じゃないだろ。やってもどうせすぐバレるし、白雪先輩に嫌われるぞ」
「「やだっ!」」

急に子どもに戻った友人達を見て、ため息を吐く。嫌なら一回言ってわかれ。この会話何回目なんだよ。

「…どうせ、お前等がやらなくてもやる人がいるだろ」

ギラギラとした目で歩いている六年生の先輩が視界の隅に見えて、僕は天女にご愁傷様と手を合わせた。
仕方ないでしょう、学園の平和のためには彼女はいない方がいいみたいだし?



(憫笑:「わぁ、この人かっわいそー(嘲笑)」みたいな感じ)

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