親を亡くしてからというもの、私は人から親切にされた事がなかった。そればかりか、疎まれる存在となった。最初こそ悲しくて淋しくて泣いたけれど今はもうそんなの慣れてしまった。だから、私はこんなに優しくされていいのかなって、あの人達の親切にすごい違和感を感じていた。

「なんか賑やかな人達だったな…。」

先程のやり取りを思い出して頬が緩んだ。なんか、暖かいなぁ。家族ってあんな感じだったのかなぁ。とうに置いてきた筈の感情がゆっくりと目を覚まし始めた気がした。


「少し疲れたみたい。ちょっと休もう…。」

私は道の側にある大きな木陰に移った。空はもう綺麗な橙に染まっていた。ああ、今日はいろんな人としゃべったなぁ。

「よぉ、嬢ちゃん楽しそうじゃねぇか。」
「うん。今日は色んな人…!」

現れたのはいつぞやの山賊達。へへっというゲスな笑い声は今までの満たされていた感情をぶち壊すにはそれはもう十分だった。

「なん、ですか…。」
「へっ、さっきはお世話になったからよぉ…。少しお礼したくてな。」

じりじりじり。ゲスな笑い声で私を追い詰める。



「ったく。気になって来てみりゃ、また絡まれてんじゃねぇか。」



「てめぇは!」
「…え!トシさん?」

トシさんは額にうっすらと汗を滲ませていた。すかさず山賊達が攻撃を仕掛けたが、トシさんはものともせずにあっという間かたずけてしまった。事の呆気無さに思わず立ち尽くした。


「何やってんだ。帰るぞ。」

あっけらかんと言うトシさん。そうだ、この時思ったんだ。この人について行こうって。

私はずんずん進んでいく大きな背を追いかけた。





 

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -