*エース死後の話




俺は死んだ。そうだ、ルフィが赤犬に狙われているのを守った所を殺されたんだ。赤犬が俺の体を貫いた時、ゆっくりと身体が倒れていく気がした。瞬間、俺も此処までか、と肌で感じ取った。だが、思えば俺の人生は悪く無いもんだった。ルフィに看取られた時心から感謝を告げる事が出来てよかったと思っている。ただ、少しだけ心残りがあるとすれば、親父達ともう少し冒険をすること、出来の悪い弟の成長を見届ける程度の事だ。でも、俺は死んだ。もう笑う事も食べる事も走る事も出来ねぇ。

だが、違った。
意識が戻る(死んだのにおかしいが)と一面灰色の世界にいた。それから自分の身体が五体満足だった。
死んでから初めて知った事。それは死後が存在する事だ。はは。笑えるだろう。死にたての俺はまず背中にくっついている羽と頭上のリングに気がついた。俺は頭の上に存立しているリングを気にしていた。

「はいはーい!お一人様ご案内致しまーす!」

添乗員風の少女がこちらに向かってきた。オレンジの旗を振りニコニコと笑っている。

「…なんだお前?」
「私は死後の世界を旅する皆様をご案内する添乗員の名前でございます。」
「添乗員?」
「はい。死後の世界というのは見ての通りなにもでしょう?つまらないし暇だと言う声が多数上がった為、私達添乗員が皆様をご案内させて頂くのです!」
「へぇ、楽しそうだな。」

つまりは死後の世界旅行ツアーってとこか。やっぱり天国ってあんのかな。あ…でも俺って天国行けんのか?つか神って奴に会ってみてぇし…。あー!ワクワクするな。

旗を両手で持ちキリリととした態度で受け答をする名前。明るい黄色の制服が周りの灰色と溶け合う事なく浮き立っていた。

「だか断る。」
「えっ!」
「案内されるより自分で冒険してぇ!」
「だめです!規則で一人の死人に一人の添乗員って決まってるんです。」
「ちっ、ケチ臭いな。」

海賊ならば未知の世界は自分の足で歩きたい。しかも死後の世界とあらばなおさら興味も沸くもの。規則を作った奴は冒険の楽しさを知らないんだろう。

俺は足を進め始めた。すると、名前が焦り出した。

「あ!私なら、この世界で会いたい人と逢わせられるんだけどな〜。」
「この世界で…?」

思わず俺は足を止めた。

「はい。私達添乗員の特権みたいなものです。」
「…。」

サッチに、会いたい。そう頭にすぐ思い付いた。サッチがこの世界にいるのならまたあいつと馬鹿やって笑いてぇ。なんだかあいつに会えると思うとほっこりしてきた。


「…行く。」
「そうですか!…よかった〜。エースさん、よろしくお願いします!」
「ああ。よろしく…名前!」


安堵した顔の名前が俺にお辞儀する。俺も軽く礼をする。そして高く旗を掲げ俺を先導する。その動作はたどたどしいが元気がいっぱいだった。

その時わずかに頭にオヤジのことを考えていた。



20110504





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