夏休みを利用して久しぶりに東京の大学から実家に戻って来た。相も変わらず家の中は母さんの声とテレビの音で煩かった。ガリガリ君をかじりつきながら縁側でじりりと熱い額を拭う。奥から母さんのやって来る足音が聞こえたけれど、私はたいして気に留めなかった。

「名前、あんた暇ならお醤油買うて来て。」
「…暇じゃない。」

はいお使い来た。ウチのおかん人使い荒いわ。醤油くらい自分で行けや。

「はい、お財布。」
「は?」
「行ってらっしゃい。」
「え、ちょっ…!」


無いわ。これは無いわ。せっかくガリガリ君食べながら猛暑冷ましてたってのに。ウチのおかんは自分の娘を真夏の炎天下へ放り込むとは。殺生な。

「早う行き!」
「あぁ、わかったって」


嗚呼!うっさい。







「あー涼し。」
此処は天国か。家に居るよりずっと涼しい。来てよかった。しばらくその感動に浸っていた。

「あ、名前や。」

誰だろう。私を呼んだ方を見れば金髪の男。

「おい、まさか俺の事忘れてたんか?」
「え?……もしかして、金造?」
「おん!何や、忘れられたか思たわ。」

偉く懐かしい顔だった。金造は偉そうな笑みを浮かべて私を見た。



スーパーを出て私達は近くのファミレスに入った。


私が金造を忘れる訳が無い。小中高校ずっと一緒だった片思いの相手をどうして忘れるものか。

「アンタ、今仕事何やってんの?」
「祓魔師やっとる。」
「へぇ。それでお坊さんみたいな格好してるんだ。」
「そや。」

水を渇いた喉へ放り込む。私達は今恋人同士に見えるのだろうか。

「なんか二人でしゃべるの懐かしな。」
「ね。そういや高校の時の彼女さんとは続いてんの?」
「そんなん別れたわ。」
「はあ!?めっちゃ仲良かったじゃん…!」
「いいか、名前。可愛い女の子は幾らかでもおる。」
「なにそれ。」

ちょっと安心した。私はその彼女さんに嫉妬してたから。でも金造は格好良いから本当に可愛い女の子と付き合ってしまうかもしれないなぁ。

「おん、名前。まだこっちおるんやろ?」
「うん」
「やったら、祭行こや。」
もちろん即答した。
あー、顔が熱い。多分隠しきれて無い顔の赤さを夏の暑さのせいにして水を飲み込んだ。











加速する熱/110822





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