氷る猫の暗躍 | ナノ
06.読み聞かせ活動手伝ってみる
【ティオ】
「――と、いう感じにー……あんだけでかい口叩いてたくせにこの有様だよ!」


怪しげな書物や薬品に囲まれた部屋。
その一角に置かれている箱に腰掛けながら僕はある人物に愚痴をこぼしている。
別に負けたって構わないけどねー。けど僕も彼らの味方であるからにして。どちらかと言うと勝ってほしい気持ちがある。
あれからある人物一人にだけ情報を流してはいるものの、やはり全部を全部話さないというのは心苦しいところがあるから、ある程度の情報なら与えている。
けど全部馬に念仏状態で聞いちゃいないが。この野郎人が折角親切心で情報与えてるっつーに。と毎回思う。それでも情報を(少しだけど)与えてる僕、自分でいうのもあれだがすげー律儀。



「いーっひっひっひ……ウルフルンもアカオーニも情けないだわさ」



そして、大きな壺の前に立つ小柄な人物が、そう口から言葉をこぼす。
中の怪しげな緑色の液体からコポリ、とりんごが浮かび上がってきた。
丸々そのままの形なのが余計怪しさ倍増である。
小柄な人物――マジョリーナは、そのりんごの茎をつまんで持ち上げ、



【マジョリーナ】
「そろそろこのマジョリーナ様の、出番だわさ」



持ち上げられたりんごは、とろみのある緑色の液体を滴らせている。
そんなりんごをつまみながら、マジョリーナは「いーっひっひっひ」と笑っていた。



【マジョリーナ】
「さてティオ、このマジョリーナ様特製りんご、食べるかい?」


【ティオ】
「謹んでご遠慮させていただきます」



今まで丸めていた背筋を伸ばし、ピシッと気をつけしながら礼をする。
んなもん食べたら腹下すに決まってんだろ!!いるか!!



それでも長年培った押しの強さを活かしりんごを渡してきたので、僕はウルフルンの口にねじ込んで登校した。
なんかビクンビクンしてたなぁ。食べなくてよかった。



 
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