氷る猫の暗躍 | ナノ
08.秘密基地探してみる
そんなわけで、僕たちは今みゆきちゃんの小さい頃住んでいた町にやってきています。
町から森へ続く一本道を歩く僕たちは、うきうきと先導するみゆきちゃんに案内されそのあとをついて行っていた。
「みんなー!はやくはやくー!」と先走って手を振るみゆきちゃんはまさに子供そのものだ。
こういうとき、「微笑ましい」って言葉を使うんだろうなぁ。



【緑川なお】
「あーあ、はしゃいじゃってー」


【黄瀬やよい】
「子供ねー、もー」



なんて、やよいちゃんが呆れたように笑って言った。
僕たちは、「お前が言うか」とやよいちゃんを見て、そのあと「あはは」と笑った。
当のやよいちゃんはなんで笑われたのかわからないようで、「え、なんで笑うのー!?」と驚いていた。




【ティオ】
「!」




あかねちゃんとやよいちゃんのやり取りを聞きながら、僕は馴染みの気配を感じ顔を上げた。
この気配は……。…ああ……ウルフルン来てるんだ。
なんだかんだエンカウント率たっけえなあ。何分の確率だよ。




【青木れいか】
「どうしました?」



れいかちゃんに声をかけられ、僕は笑いながら答える。



【ティオ】
「いやあ、森の中の空気って澄んでて気持ちいいなあって、さ」



そう答えると、れいかちゃんは「ふふっ」と笑い、「そうですね」と答えてくれた。
あーやっぱこの子油断ならねえわ。

走りゆくみゆきちゃんの後を追い、人一人がようやく抜けられる幅を、背をかがめ一列になって通り抜ける。



【日野あかね】
「みゆきぃ、どこまで行くねん」


【黄瀬やよい】
「でもだんだん秘密の場所みたいになってきたね」



そうだねー、と適当にうなづく。
……と、前方から聞きなれない人間の声が聞こえてきた。
この拙いしゃべり方、声の高さ、……小さい子たち?
立ち止るみゆきちゃんの横に駆け寄り、草の影に隠れ声のするほうを覗く。
そこには、僕の予想通りの光景があった。



「どうぞー」

「まあ、いただきますわ!もぐもぐもぐ……とってもおいしいですわおくさま!」



可愛いピンクのシートを広げ、その上に上がり道具を広げおままごとをする幼女が二人いた。
先客か……。



【キャンディー】
「…みゆき?」


【ティオ】
「……みゆきちゃん?」



キュッとキャンディーを抱きしめるみゆきちゃんを見上げる。
僕たちの様子を不審に思ったのか、後ろの四人も駆け足でやってきた。



【日野あかね】
「…もしかして、あそこか?みゆきの秘密の場所」


【星空みゆき】
「うん…。でも今は、あの子たちの素敵な秘密の場所みたい」



みゆきちゃんは踵を返し、「いこ」と元来た道を歩き出した。
それにあかねちゃんは「せやな」と微笑んだ。



【青木れいか】
「残念ですが、他を探しましょう?」


【星空みゆき】
「うんっ」



顔は笑っているが、みゆきちゃんからはどことなく気落ちした雰囲気を感じだ。
いや……気落ち、というより……さびしそう?



【ティオ】
「…みゆきちゃ――」



「いい加減目障りだなぁ…」



突如頭上から聞こえた、聞きなれた声。



【ウルフルン】
「俺は笑顔が大嫌いなんだ!!」



見上げてみると、逆さまに浮かんでいるウルフルンがいた。
皆も気づいたようで、全員がウルフルンを見上げている。
ウルフルンはいつもの闇の絵本を取り出し、



【ウルフルン】
「世界よ!最悪の結末、バッドエンドに染まれ!

白紙の未来を黒く塗りつぶすのだ!」



手の中で闇の黒い絵の具を握り潰し、闇の絵本に塗りつける。
バッドエンド空間が発動し、ウルフルン特有の満月の夜空の背景になる。
今までままごとをしていた幼女二人はバッドエンド空間にあてられバッドエナジーを放出していた。
いやでも、このくらいのバッドエナジーで闇の時計は動くのか?



【ウルフルン】
「ウルッフッフッフ

人間たちの発したバッドエナジーが、悪の皇帝ピエーロ様を蘇らせていくのだ!!」



って動いたあああ!!
いつもみたいに一個分動いたあああ!!
二人分だけでもいいのかあ…ふーん……って思ったが、そういえばここ森だっけ。
ここにいる動物たちからもバッドエナジーとれるか。なら納得だわ。うん。



【キャンディー】
「みんな!変身クル!」



キャンディーの声を聞き、皆はスマイルパクトを装備し、僕はそんな皆の輪から離れた。
一応一般人設定だからね。避難しとかないと。
バッドエナジーを放出して身動きがとれない幼女二人を抱え、適当な木の陰に隠れる。
いつぞやの緑川家のように大人数じゃないし、隠れる場所もあるし、今回は楽で助かるわー。
なんて腰を落ち着けていると、背もたれにしていた木から振動が伝わった。
そして次の瞬間には背もたれがなくなった。
え、なんでだ?



【青木れいか】
「ティオさん!危ない!!」



背もたれがなくなり、重心が後ろに傾いた僕はそのまま後ろに倒れた。
そのことにより、自然と背後の光景が逆さまに映し出される。
あ、そういうこと。



「アカンベェーー!!」



ウルフルンのやろう、よりによって僕が隠れた木に赤っ鼻つかいやがったな。


少し向こうで、「あっやべっ」と焦りを露わにするウルフルンを睨み付ける。
そしてアカンベェを見ると、……がっつり目があった。
普通の場合ならば、アカンベェは攻撃してくるだろう。そう、普通の場合は。
しかし僕はバッドエンド王国側の存在。そのうえこのアカンベェはウルフルンが操るから無意識下で僕に攻撃しないようにしているのだろう。
このまま逃げてもいいが、それだと不信感が出る可能性があるな……それは面倒だ。是非避けたい。
僕は悟られない程度にため息をつき、ウルフルンに視線で指示を出す。



『このまま攻撃しないと不自然だから、軽くこっちに攻撃してくんない?』



僕の処遇を気にしていたのか、いまだ僕に視線を向けていたウルフルンにこの指示を出すのはたやすかった。
アカオーニほど頭が悪いわけではないウルフルンは、僕の言わんとしていることがわかったようで、認識できるか否かほど小さく頷くとアカンベェを操作した。
茂みで覆われたかのような拳を振りかざすアカンベェ。
僕は両手両足を持ち上げ、両手を顔の横に置き、腕をバネにし勢いをつけて起き上がる。
無事立ち上がった僕は地を蹴り、幼女二人を小脇に抱えその場から離れた。
少しだけ顔を後ろに向け、走りながら僕は告げる。



【ティオ】
「ごめん心配かけて!でも僕は大丈夫だから!!だから早く、アカンベェを!」



僕の声は届いたようで、プリキュアの五人は安心したようにうなづいた。
いやぁ…さすが花の十台前半。純粋ー!
扱いやすくてこういう時楽でいいわぁ。
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