氷る猫の暗躍 | ナノ
08.秘密基地探してみる
かくして、不思議図書館まで逃げてきた僕たち。
肩を大きく上下させ、息を整えている皆を「軟弱軟弱ぅ」と思いつつ、一つも息を切らしていない僕は切り株に腰をかけ眺めていた。
まああのなおちゃんが息を切らしているんだから、みゆきちゃんたちがへばっちゃうのも仕方ない話かぁ。
ようやく息を整えたなおちゃんが、まだ若干息切れの余地を残した、絶え絶えとした声で、



【緑川なお】
「なに考えてんのよ、もう……!」


【日野あかね】
「あそこなら人に邪魔されへんかなぁ……と、思ったんやけど……」


【青木れいか】
「もしやわたしたちのほうが、ゴリラさんの邪魔をしたのでは……」


【黄瀬やよい】
「むぅ……」


【星空みゆき】
「へ、えへへぇ……」



「「「はぁ……」」」



全員で肩を落とし、ため息を吐く。
すると、れいかちゃんが切り株に座る僕へ視線を投げかけた。なんや。



【青木れいか】
「ティオさんは、なにか思い当たる場所はありますか?」


【ティオ】
「え……」



そうきたかー。
正直なにも考えてなかった…ああ皆そんな若干期待したような目でみるなおい。
うーん……と数秒考え、あっと一つ場所を思いつく。



【ティオ】
「南極――」


「「「はあ……」」」


【ティオ】
「おいせめて最後まで聞けよ」



話振ってきておいてなんだこら。



【緑川なお】
「まいったなぁ……」


【黄瀬やよい】
「難しいね秘密基地探すのって…」


【日野あかね】
「やっぱり、そんな簡単に見つかるもんちゃうな」


【ティオ】
「まあ簡単ならこう苦労はしないしねぇ」



漂う諦めムードに便乗して、こちらも肩を落として見せる。
正直なところどうでもいいけどね、秘密基地とか。こうして仕事できれば。
そんな僕らの諦めムードを察知したのか、みゆきちゃんは「え……」と声をもらした。



【星空みゆき】
「どうしたの?皆…。…きっと見つかるよ!」



確証のない励ましに、僕たちは苦笑しか返せない。



【星空みゆき】
「…見つかるよ!」



そんな中、れいかちゃんが苦笑なしにみゆきちゃんに問うた。



【青木れいか】
「みゆきさんは、秘密の場所にずいぶんこだわりがあるようですね。なにか理由があるんですか?」



問われたみゆきちゃんは、「えへへ」と笑うと、手持ちの手提げバッグの中をあさり出した。
取り出されたのは、



【黄瀬やよい】
「何の本?」



そう。本。
一冊の本をみゆきちゃんは取り出した。




【キャンディー】
「赤毛のアンクル」


【星空みゆき】
「うん。…わたし、小さい頃からアンが大好きなの」



みゆきちゃんは手元の本に視線を落とし、物思いにふけるように語る。



【星空みゆき】
「アンは友達のダイアナと、二人だけの秘密の場所で永遠の友情を誓うの。

その場面にものすごく憧れてね、近くの森に素敵な場所を探しに行ったんだ。私もアンみたいに、大切な友達との秘密の場所を持ちたくて…」



本を抱きしめ、語っていたみゆきちゃんはこちらを向くと、困ったように笑って



【星空みゆき】
「そこはね、ホントに素敵なところなんだよ」



みゆきちゃんの話を聞き、皆と顔を見合わせる。
そしてみゆきちゃんへ顔を向け、



【黄瀬やよい】
「なんだ、もう見つかってるじゃない」



やよいちゃんの言葉に、みゆきちゃんは「え?」とキョトンとする。



【日野あかね】
「行ってみよ?な?」



あかねちゃんの言葉に、なおちゃんが「うん」とうなづき、



【緑川なお】
「そこ、あたしたちの秘密の場所にいいんじゃないかな」



と言った。
僕たちの言葉に、みゆきちゃんはなおもキョトンとして、「…いいの?」と呆然としたまま問うた。
それには答えず、れいかちゃんはみゆきちゃんに近寄り、



【青木れいか】
「みゆきさんが小さい頃に住んでいた町にあるのね?」



とだけ聞いた。
それは遠回しの了承の言葉。
それを聞いたみゆきちゃんは、今度は僕のほうに視線をよこした。
ああ、僕も答えなきゃいけないのか。



【ティオ】
「僕もさーんせーい!行ってみたいなぁ。ていうかもうみゆきちゃんの案以外無いんだし、さ。それとも南極行く?」


「「「さあ、その森に行ってみよう!!」」」


【ティオ】
「…………」



というわけで、みゆきちゃんの秘密の場所に行ってみることになった。
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