氷る猫の暗躍 | ナノ
08.秘密基地探してみる
本の扉を抜けた先は――なにか、倉庫のような場所だった。



【キャンディー】
「ここどこクル?」



みゆきちゃんの腕の中で、キャンディーが不思議そうに辺りを見回す。



【青木れいか】
「皆さん、こちらへ」



れいかちゃんはすでに通路の方へ立っており、勢いのまま駆け出していった。
通路の先の扉から猛烈な寒風が吹き荒んでいた。
扉の向こうは外へと続いており、階段が見える。
れいかちゃんは階段を上った、側風塔にいた。



【星空みゆき】
「れいかちゃん、ここって?」


【青木れいか】
「富士山です!」



れいかちゃん、あなたって子は……!!
よりのよって富士山測候所を選ぶなんて……!!



【黄瀬やよい】
「なんで、富士山?」



やよいちゃんがもっともな疑問を投げかける。
れいかちゃんはそれに対し、木箱から――



――『道』と達筆で書かれた掛け軸を取り出し、僕たちへ掲げてみせた。



「「「……道?」」」



【青木れいか】
「そう!プリキュアとして、わたしたちが歩む道は険しいわ!人の一生は、重荷を負うて遠き道を往くが如し。でもその道の先には、この日本一の富士山があるの。

わたしたちにとって、これほどふさわしい場所があるかしら?」



【日野あかね】
「……なに言うてるのか、ぜんぜんわからん…」


【星空みゆき】
「い、いい所だけど、寒いね!?」



合いの手のごとく、やよいちゃんが一つくしゃみをした。



【緑川なお】
「こんなとこいたら、風邪引いちゃうよー!」



なおちゃんの言葉に、「ハッ」としたれいかちゃんは、



【青木れいか】
「そっ、そうね。ごめんなさい……」



と一言謝った。
かくして、なんかこう、良く分からない崇高そうな考えは、実質的に無理があるとのことで、却下となった。



【星空みゆき】
「い、一旦帰ろうかー?」



と強風吹き荒ぶ中みゆきちゃんが大声でれいかちゃんに声をかける。
れいかちゃんは取り出した掛け軸をいそいそと巻きなおし、木箱に仕舞い直した。



【緑川なお】
「あれ?ティオは?」



なおちゃんがそう言って、辺りを見回す。
ふっ、どこを見ているというのか……。



【日野あかね】
「って!!ティオー!!お前なにしてんねん!!」


【ティオ】
「きいいいもちいいいい!!!!」



れいかちゃんの後ろ。
側風塔のフェンスに立ち、上着を脱いだ半そでで寒風を感じていた。



【ティオ】
「僕今日からここに住むううう!!」


【日野あかね】
「アホ!!こいつ最高にアホ!!」



かくして僕も(強制連行で)不思議図書館へ連れ戻された。
このさい、なにやられいかちゃんが「わたしの考えをわかってくれたのですねティオさんっ……!」と好感度を無駄に上げていたが、それは見て見ぬ振りをさせていただいた。意地でもフラグは立てない。絶対だ。
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