氷る猫の暗躍 | ナノ
08.秘密基地探してみる
【ティオ】
「だー……しんど」



鞄片手にうろうろする。
今日は休日。みゆきちゃん提案「秘密基地探索」のため朝から呼び出しを食らっている。
秘密基地に自分が持って行きたいものを持ち寄るらしい、が。

特にない場合、非常に困る。

いまだなにも詰まってない鞄を見て、小さくため息を漏らす。
きっとあの子たちのことだ、必ずなにかしら持ってくるに違いない。
そのなかに特に何も持参していなかったら目立つ。変に目立つことは避けたい。



【ティオ】
「えーと、持ち寄るっつったって……なにかあったかなぁ」



ガラケーとスマホを手に取り、心の中でひっそり呟く。
僕は携帯二つ持ちだ。
ガラケーの方をプリキュア用に使用している。
スマホはただの暇つぶし道具。ネットとか開くときに便利なんだなこれが。
この二つは必需品として、上着のポケットにしまう。
あとは適当におつまみでも持っていくか。なにがあったかなー……とりあえずあたりめは持っていこうかなぁ。
ほかにはビールに、チーカマと枝豆を――



スパアン!!



頭をなにか、すばやいものが叩いていった。
痛む頭をとっさに押さえ、頭上を見上げる。
そこには眉をしかめたジョーカーがいた。



【ティオ】
「な、なにをする!?」


【ジョーカー】
「『なにを』?それはこちらの台詞ですよ。なんですかその鞄の中身は」


【ティオ】
「なにって……見てわかんないの!?」


【ジョーカー】
「女子中学生が持ち寄る物ではないこと以外わかりません」



そういわれ、改めて鞄の中身を見る。

・あたりめ(一袋)
・ビール(五本)
・チーカマ(五袋)
・枝豆(五十個入り一袋)

ほほう……なるほど。



【ティオ】
「おっさんかっ!!?」


【ジョーカー】
(自分でつっこんだ……)



なに、いつの間にこんなものを入れていたんだ!?無意識って怖い……。



【ジョーカー】
「いくら実年齢が二十歳を悠に越してるとはいえ、あなたは今花の十台設定なんですよ?」


【ティオ】
「設定とかちょっおまっメメタァ」


【ジョーカー】
「夜に一人寂しく晩酌とかしないでください!疲れてるのもわかりますけど…できることなら控えるようにしてくださいね?」


【ティオ】
「んだよ酒一滴で酔っ払う下戸のくせして!ならジョーカーが僕の晩酌に付き合ってくれんの!?」


【ジョーカー】
「無理です!って、だから晩酌事態やめてください!」


【ティオ】
「やーだー!飲まないとやってらんない!」


【ジョーカー】
「我侭いわないの仕事なんですから!せめて今日から一週間は禁酒ですよ」


【ティオ】
「外道の極みっ!!」



鞄の中身のほとんどを没収された。チーカマは残してくれた。せめてもの優しさだろうか。
禁酒令を出され、駄々っ子の如くゴロゴロ床を転がっていると、顔の横に僕の鞄が置かれた。なぜか中が膨らんでいる状態で。



【ティオ】
「ジョーカー?」


【ジョーカー】
「ほら、ばっちいから早く起きてください」


【ティオ】
「なに入れたのさこr」


【ジョーカー】
「あっ、ちょ、ここで開けないでください」


【ティオ】
「あべしっ!!」



くっ、一瞬で動揺を押さえ冷静に平手打ちしてくるとは……ジョーカーこの野郎。
ていうか真顔で平手打ちとか結構心にくるね。ティオちゃんショック。



【ジョーカー】
「ほら、くだらないことしてないで。時間なくなってきてるんじゃないですか?」


【ティオ】
「あ、やっべ。んじゃそろそろ行くかなー……。ジョーカーありがとね!」



中身の入った鞄を抱え、自室に向かって通路を走り出す。
本は結構読むほうなので、本棚に苦労はしていない。湿気が多いので管理に困っていたが、まさかこういうところで役に立つとはな……わかんないもんだなぁ。
ぎっしり詰まってる本棚から数冊抜き、隙間を作る。
三つの棚から適当に本を出し、教わった手順通りにスライドさせ不思議図書館への扉を開ける。
途端、本棚から光が溢れそのなかへ引きずり込まれていった。



 
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