氷る猫の暗躍 | ナノ
07.決め台詞とか決めてみる
【ティオ】
「うおおおお!!」



飛び出した瞬間、空中でクルッと回転して芝生の上に着地する。
少し後ろを見てみると、みゆきちゃん、あかねちゃん、なおちゃん、れいかちゃんの順で積み重なっている姿があった。
ちなみにやよいちゃんは着地できたようで、すぐ横でこの空間を「すごーい…」と見渡していた。
僕もそれに習って見渡してみる。



【ティオ】
「へぇ」



なんとも不思議な空間だった。
木々の間に書架が並び、上からは暖かな陽光が射している。
森林浴でもしている気分になる。



【ポップ】
「ここには世界中のメルヘンが集められているでござる」


【星空みゆき】
「ほんと!?ぜぇーんぶよみたぁーウヘアッ!!」



テンションがハイになったみゆきちゃんが、クルクルと回っていると何かに足を躓かせてしまった。



【キャンディー】
「あー!絵本があったクルー!」


【ポップ】
「良かったでござる」



どうやら躓いた原因は、芝生に落ちていた絵本のようだ。
ところでキャンティーにポップ。ちょっとはみゆきちゃんの心配をしてやろうぜ。



大きなきのこの上で絵本を持っている二人に向かい、僕らは大きな根っこに並んで座っていた。
どうやら二人が絵本を読み聞かせしてくれるらしい。
昔は紙芝居屋さんの前に、こうして大人数で並んで座ったもんだなぁ。今はないけど。



【キャンディー】
「では、おまちかねクル」


【ポップ】
「伝説の戦士・プリキュアの始まりでござる!」



全員の拍手の中、ポップが絵本を開く。
読み進められる絵本の中の絵柄で、ウルフルン、アカオーニ、マジョリーナが出てきたことに少なからず驚いた。
ちょっと待て、これジョーカーとか出てこないよね?
それだと僕まで出てくる可能性があるんだが。まさかこんなところでバレるなんてこと……!!
途中みゆきちゃんとポップのQ&Aが飛び交ったが、正直それどころじゃない。
ぶっちゃけバレるかバレないかの瀬戸際なので気が気じゃないんだ!悪かったな!



と、読み聞かせがロイヤルクイーンとピエーロの引き分けの場面まで来たところ、



【ポップ】
「拙者たちは、女王様を復活させたいのでござるが、それには赤い玉を浄化し、キュアデコルを取り戻す必要があるのでござる」



その言葉を聞き、一時自分の焦りを遠ざける。いい情報が入ったんだ、聞き逃す手はない。
なるほど。メルヘンランドの目的は女王復活か。こっちと似たり寄ったりの理由だな。



【ポップ】
「そして、集めたキュアデコルは、このデコルデコールに」


【キャンディー】
「入れるクル」



取り出されたのは、ハート型の溝が16個あるトランクケースだった。



【黄瀬やおい】
「少しだけ、持ってるよね?」


【星空みゆき】
「入れてみよう!」



そういって、各々が持っていたキュアデコルを全てセットする。



【ポップ】
「デコルデコールがキュアデコルで一杯になれば、女王様が復活するでござる!」


【日野あかね】
「へぇー」


【黄瀬やよい】
「皆で頑張れば、すぐだよ!」


「「「うん!」」」



一緒に頷いてみせる。
メモは……まぁ、今とってもいいか。理由を聞かれたら事前に用意してたものを言えばいいし。
それにしても、ここで終われば僕の正体が皆にバレる可能性はないな。そう思い、ひとまず胸を撫で下ろす。




【青木れいか】
「ところで、その後悪者たちはどうなったのですか?」



撫で下ろしたのもつかの間、すぐにれいかちゃんがそう言った。
くっそ…、折角バレずに済むかと思ったのに……蒸し返しやがって……!!



【キャンディー】
「じゃあ続きを読むクル!」



僕の焦りをよそに、再び絵本を開く二人(二匹?)。
……よし、そっちがその気なら相手にしてやる……。
この際バレてもしょうがないと思う事にしよう。そのときまでメモとってやんよ。



【ポップ】
「悪者たちは、皇帝ピエーロの封印を解こうと考えました。そんな悪者たちの企みを止めるため、女王様は奇跡の光を地球に送りました。そしてキャンディーに――」


【キャンディー】
「こう言ったクルー。

『キャンディー、五人のプリキュアを探しなさーい』クルー。

『任せるクル!』

こうして、キャンディーは来たクル!」


【星空みゆき】
「すごーい!それでそれで?次はどうなるのー?」



ページをめくると、プリキュアに変身したみゆきちゃんが現れた。
次のページにはあかねちゃん、そしてやよいちゃん、なおちゃん、れいかちゃんが。



【ティオ】
「そ、それで……次のページは?」



次をせかし、ページをめくってもらう。
そこには――



何も描かれていなかった。



「「「真っ白?」」」


【黄瀬やよい】
「なんで?」


【ポップ】
「この絵本の主人公は、君たちなのでござるよ!だからこの先の物語は、君たちが作ってゆくのでござる!」


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