氷る猫の暗躍 | ナノ
07.決め台詞とか決めてみる
【星空みゆき】
「祝!」


「「「全員集合!」」」



クルー!と叫びながら、上のくす球からキャンディーが色とりどりの紙ふぶきと共に飛び出してきた。
キャンディーはくす球に取り付けられた紐に括り付けられており、ビヨンビヨン落ちた反動で跳ねている。
それをみゆきちゃんがキャッチすると、



【キャンディー】
「プリキュアが揃ったクル!うれしいクルー!」



と手足をバタつかせながら喜びを表現した。
僕たちは「おー!」と拍手を送る。



今、僕たちはみゆきちゃんの家におじゃましている。
目的は「プリキュアが全員揃ったしお祝いしようぜ!」だ。くす球で大体の人は予想できると思うが。



【青木れいか】
「では、改めて質問です」


【キャンディー】
「クル!」


【青木れいか】
「プリキュアとは、何なのですか?」


【キャンディー】
「伝説の戦士クルっ」


【緑川なお】
「なんであんなにすごい力があるの?」


【キャンディー】
「伝説の戦士だからクルっ」


【ティオ】
「……へっ、へえ」


【日野あかね】
「…それじゃ、わからへんやん!」



うっかり苦笑い浮かべちまったよ。



【黄瀬やよい】
「あの怖い人たちは何者なの?」


【キャンディー】
「……クル?」


【星空みゆき】
「目的は、何なのかな?」


【キャンディー】
「……クル…?」


【日野あかね】
「うちらは、何したらいいの?」


【キャンディー】
「…でっ、伝説の、戦士クル…?」


【ティオ】
「最初ウルフルンとアカオーニが現れたとき、名前呼んでたよね?知ってたの?」


【キャンディー】
「……く、クル…」



キャンディーの顔が冷や汗まみれになる。
そして、場には沈黙が降りた。
数秒が経つと、キャンディーがくす球と自分が繋がっている紐を伝って登り、くす球へと帰っていった。
パタンとしまるくす球。篭っちゃったよ。



【キャンディー】
「キャンディーよくわからないクル…」



みゆきちゃんの絶叫が部屋に響く。
僕も絶叫をあげたかったが、あまりのことに力が抜けて声が出せなかったのだ。
おい…お、おい……そんな。お前がわからないなら今後ろくな情報が期待できねえじゃねえか…!
れいかちゃんも加わって、情報入手が困難になったというのに、更にこれじゃ先が思いやられてしまう。
先の未来を想像し、気落ちしていると「バッサバッサ」と何かが羽を動かすような音が聞こえた。
僕は丁度背中をベランダに向ける形に座っていたので、後ろを振り向いて音の正体を確認する。
鳥ならこんな、人間の気配がするところにくるとは思えないんだよね。なのにこの羽ばたく音はこっちに近づいてきているっていうか……。
僕のいきなりの行動に、皆が注目する。




【星空みゆき】
「ティオちゃん、どったの?」


【ティオ】
「いやほら、あれ」


【星空みゆき】
「ん?……なにあれ?本?」



僕が指差した先。そこには本がバッサバッサ羽ばたくようにしてこちらに向かってくる姿があった。
明らかにベランダの開いた窓からこちらへ侵入いようとしている。
しかもなかなかの勢いだ。
僕はベランダの窓の正面にいる。このままでは直線コースで当たってしまうので、とっさにしゃがんで回避する。
まさか僕が回避するとは思っていなかったらしい、机を挟んで僕の正面に座っていたみゆきちゃんの顔面に直撃した。



【ティオ】
「あ……ごめん」



後ろに倒れるみゆきちゃんに、片手をあげて謝罪する。
やっぱなかなかの勢いがあったんだな。避けてよかった。



「おっと、スマンでござる」



すると、飛んできた本の中から声がした。
お?と本を見ると、



ポンッ



なんと、本の中から狐のような尻尾とライオンのような鬣を持ち、右目が前髪で隠れている……キャンディーのような生物が出てきた。なんだか顔が「(`・ω・´)キリッ」としていらっしゃる。
なんか出た。



【星空みゆき】
「あ、あなたは?」



赤くなった鼻を押さえながらみゆきちゃんが問う。



「邪魔するでござる。拙者は――」


【キャンディー】
「おにいいいいちゃあああああああ」


「ンゴハァッ!!」



生物の自己紹介を妨害するかのように、くす球を突き破りキャンディーが生物にダイブした。
生物は悲鳴をあげながら、地に伏した。




【日野あかね】
「……えっ?」


【青木れいか】
「キャンディーの……」



「「「お兄ちゃん!?」」」



どうやらキャンディーのお兄ちゃんらしき生物は、左目を渦巻きのようにして目を回していた。



 
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