氷る猫の暗躍 | ナノ
05.サッカーとかしてみる
河川敷の下に降り、緑川家とプリキュア組(マネージャー含む)が対峙する。
長男がサッカーボールに足を乗せ、



「俺たち兄弟の、固い絆を見せてやる!」


「「「おー!!」」」



やる気満々だ。
こちらも負け時を手をつなぎ、



【日野あかね】
「うちらだって、チームワークで負けへんで!」


「「「おー!!」」」



つないだ手が掲げられる。
つられて上を見上げれば、見知った赤鬼の姿が見えた。
闇の絵本を取り出しているところを見ると、ここをバッドエンド空間にするつもりのようだ。
予想通り、空が青から黒に近い色に染まり、バッドエンド空間が出来上がった。
緑川家は全員膝をつき、バッドエナジーを放出している。




【星空みゆき】
「緑川さんっ!!」




駆け寄ろうとした僕たちの前に、アカオーニがズシンッ!!と降り立つ。
そして――




【アカオーニ】
「良い子はいねがああ――!!」




【ティオ】
「なまはげかっ!」


【日野あかね】
「それを言うなら、『泣く子はいねがー』っや」




あかねちゃんと一緒につっこむ。
するとアカオーニはこちらへ向き、




【アカオーニ】
「今の声……もしかしてティ「そおい!!」あいたぁ!!」




転がっていたサッカーボールを思いっきり!!蹴る!!超!!エキサイティンッ!!




【アカオーニ】
「いったいオニ!!なにをするオニ!?」


【ティオ】
「っせぇ!!敵に対して手加減する奴はいないんだよ!!」


【アカオーニ】
「お、俺様、怒ったオニ!!覚悟するオニー!!」




ズシンズシンと近寄ってくる足音。
僕はきびすを返し、




【ティオ】
「じゃ、後はガンバ」


【星空みゆき】
「えぇ!?」


【日野あかね】
「散々やっといて結局それかい!?」


【ティオ】
「無力な僕に戦えと言うの!?この鬼畜っ」


【日野あかね】
「問答無用で顔面シュートきめたお前に言われたかないわ!!」



文句を言われながら三人の下を離れ、緑川家に近づく。
こんな広いところにいては戦いに巻き込まれてしまう。死人を出したら後が面倒だからね、ここは担いででも安全そうな場所に避難させてもらうとする。
まずは年少者順に、一番下のこうた君とゆうた君を小脇に抱えて橋の下へ移動させる。
その間、アカオーニはあかんべぇを召喚していた。ちょっと早すぎないですかね。
ゴールネットを媒体としたあかんべぇは、どうやら飛行タイプのようで空を飛んでいた。プテラノドンみてぇ。というかその網でどうやって空を飛んでいるのかちょっと疑問だけど聞いちゃだめなんかな。




【ティオ】
「よっし……次!」




橋の下に二人を下ろし、続いてまだ開けた場所にいる残りの緑川家のもとへ走る。




【ティオ】
「っ!」




うかつだった。あいつ飛行タイプの上に射撃までしてくるのか。
放たれた弾(サッカーボール)が緑川家へ飛んでいく。




【ティオ】
「ちっ!!」




勢い良く舌打ちをかまし、地面を勢い良く蹴る。
土を抉りながら走るが、先に放たれたボールのほうが早い。
間に合わないか……!
そう覚悟したが、緑川家の前にプリキュアへと変身したみゆきちゃんが立ちはだかり、必殺技でボールを一掃した。
ぶっちゃけナイスだが、こんなとこで必殺技使って大丈夫か。
防御技ないのかなぁ、不便だなぁ。と思ったが、素直に評価するとみゆきちゃんの功績は素晴らしいので、「ナイス!」と口に出しておく。
が、一掃したことによりおきた粉塵にまぎれ、あかんべぇがみゆきちゃんを掻っ攫って行ってしまった。
あかんべぇの羽の網にぐるぐるまきにされ、一緒に空を観光するみゆきちゃん(本人必死)。まぁ、そこは正義の味方として仲間に助けてもらうなり自力でなんとかしてもらおうと思う。ほら、あかねちゃんたちが助けに行ってくれてるし。うまくみゆきちゃん盾にされたりしてるけど。

ひなちゃんとはるちゃんを小脇に抱え、橋の下へと走る。
最後はなおちゃんとけいた君だが……正直二人を一緒に背負うのは難しい。ここは一人ずつ運んでいこう、とまずはけいた君を持ち上げ走り出す。
ある意味バッドエンド空間でよかった。好奇心旺盛な子供たちだし、バッドエナジーを放出していなかったら、今頃色んなところを暴れまわっているに違いない。
橋の下で大人しく沈んでいる五人を確認し、最後のなおちゃん救出のため走り出す。
が、彼女の体からバッドエナジーが出ていない……。
それどころか驚いた顔で周りをキョロキョロしたり、プリキュアになった三人に驚きをあらわにしていた。



【ティオ】
「なおちゃん!気がついたんだね!」


【緑川なお】
「てぃ、ティオ。ど、どういうことなのこれ……?」


【ティオ】
「えー……っとー……」




説明するのめんどくさいなぁ、どっから手を付ければよいやら。
思案していると、頭上からガァンッ!!と鉄特有の音が響いた。




【アカオーニ】
「なにが絆オニ!」




アカオーニだ。
僕が緑川家を運んでいた橋とは別の橋の手すりに乗り、仁王立ちしているアカオーニ。おいおい落ちるぞ。




【アカオーニ】
「仲間?家族?そんなもの、最後はぜーんぶバラバラになるオニ!」




両手を広げて主張するアカオーニ。
本当なら、本来味方の悪役らしい台詞に共感するところだが、今はそんな気分にはなれなかった。
むしろ、反論した気分になってくる。
違う。違うのだと。




【ティオ】
「違う……」


【アカオーニ】
「おに?」


【ティオ】
「違う!仲間は僕はよく知らないけど、家族は違う!家族は、バラバラになんかならないよ!絶対ないもん!」


【アカオーニ】
「はあ?」


【ティオ】
「賭けても良い。そんなことにはならないって!」




説明できる根拠なんて僕は持ち合わせていない。
感情の赴くまま叫ぶ。
家族だけは違う。違うんだ。と。




【アカオーニ】
「くだらんオニ!そんなもの、今すぐバラバラにしてやるオニ!あかんべぇ!」




アカオーニはあかんべぇに指示を出す。
あかんべぇは空を飛びあがり、もう一つの橋の下、緑川家のもとへ飛んでいく。
狙われたら、避け切れない!

みゆきちゃんの甲高い悲鳴すら気にならなかった。
とにかく緑川家のもとへ走って、そのまだまだ小さい五人を抱きこむ。
この、たった14歳の少女の体では小さすぎて全員を覆い隠すことはできないが、少しでも壁になればいいと思った。
普通の人間より頑丈にできているから別段問題はないが、これはある意味裏切り行為かなぁ……と漫然と思った。

しかし、こうしないと駄目だと思ったのだ。そうじゃないと自分が築き上げてきた価値観が台無しになる気がしてしょうがなかったのだ。

来る衝撃に目を瞑る。さあ来い!受け止めてやんよ!!やんよやんよ。




【ティオ】
「…………」




来ないんですけど。
え、僕折角かっこつけたんですけど。
と思って後ろを振り向いたら、なおちゃんが両手を広げ、僕たちを庇うように立ちふさがっていた。




【緑川なお】
「家族は、バラバラなんかにはならない!あたしたち家族の絆は、永遠に消えない!!」




イケメンに全部もっていかれたでござる(´・ω・`) ショボーン




どうやってあかんべぇを止めたのかとか、あの距離をどうやって来たのかとか、なんとなく転がるサッカーボールとあの俊足でだいたい察しはつくけど、そんなん今はどうでもいいわ。折角かっこつけたのに、更なるイケメンに根こそぎ掻っ攫われたでござる。ショボン




【アカオーニ】
「なんだお前?やってしまえ、あかんべぇ!」




指示されたあかんべぇは、のっしのっしとなおちゃんへと近づく。




【緑川なお】
「あんたたちがどこの誰かは知らないけど、もしあたしたち家族の絆を断ち切ろうってんなら――」




あかんべぇが腕を振り上げる。




【緑川なお】
「あたしが戦う!!」




 
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