氷る猫の暗躍 | ナノ
05.サッカーとかしてみる
【ティオ】
「おっじゃまー」



緑川の表札がかかっている門を抜け、すぐそこの玄関を開ける。
すると中から騒がしい音が聞こえてきた。
どうやらみゆきちゃんがちびっ子たちと遊んであげてるようだ。
僕は靴を脱いで勝手に上がる。
向こうは僕がくること知ってるし、別に問題ないだろう。
キッチンを抜けると、なおちゃんが料理の最中だった。



【ティオ】
「よっ」


【緑川なお】
「ティオ、来てたんだ!」


【ティオ】
「ついさっき来たばっかだよー」


【緑川なお】
「ホントに早かったね、あたしたちもさっき帰ってきたばっかだよ」


【ティオ】
「あちゃ、先回りしてやろうかと思ったけど無理だったわ」


【緑川なお】
「そうはいかないって」



なおちゃんは笑いながら卵をフライパンに流していく。



【緑川なお】
「みゆきちゃんの手伝いする?それともこっち?」


【ティオ】
「えー、お客さんとして持て成してくれないのー?」


【緑川なお】
「働かざるもの食うべからず!だよ」


【ティオ】
「そうだねぇ……料理は現代アートになるからみゆきちゃん手伝ってくるわ」



前に料理を作ってみたが、それはそれは見事な現代アートが完成した。
原材料からは考えられないできばえぶりにバッドエンド王国の皆が嘆きの声を発していたことは記憶に新しい。
それなら子供たちの相手をしたほうが良さそうだ。幸い、ここの家の子供たちには気に入られてるし。
縁側沿いに歩いていると、キャンディーがのろのろとした動きで家の外に向かっていくのが見えた。思わず声をかける。



【ティオ】
「キャンディー……なんというか、無事?」


【キャンディー】
「無事じゃないクル…、みゆき一人じゃ手に追えないからあかねとやよいを呼んでくるクル……」


【ティオ】
「おー、お疲れー…」




ヨロヨロと立ち去っていく姿が、かわいいマスコットのはずなのに哀愁漂っている。
それだけ小さい子供の相手は根気が必要ってことだ。
キャンディーはバッドエンド王国のウルフルンやアカオーニのことは知っているようだが、僕のことは知らないらしい。そのほうが都合がいいから、別にいいんだけど。




【ティオ】
「やっほー!ティオちゃんが遊びに来たよー!!」




襖の陰からバッと登場する。
すると子供たちの目がこちらに向き、新しい遊び相手の登場に目を輝かせた。




「ティオお姉ちゃんだー!」


「いらっしゃーい」




ワラワラとよってくる子供たち。虫けらのようにかわいい。非常にわかりにくいが、これ元ネタ毛利元就ね。




【星空みゆき】
「ティオちゃん、助かった……」


【ティオ】
「乙乙」




ぐったり疲れ顔のみゆきちゃんの肩をぽんぽん叩いてやる。




「じゃあ、次お姉ちゃんたちが鬼ね!」


【星空みゆき】
「よーし!追いかけちゃうゾッ」




みゆきちゃんの顔めがけて座布団炸裂。超エキサイティン。




「当たったらガオーって鳴くの!」


【星空みゆき】
「そういう鬼!?」




いけー!やれやれー!と子供たちが一斉にこちらに向かって物を投げてくる。




【ティオ】
「……見切った!!」




投げられるものを俊敏に避け続ける。
「当たらんよ、当たらんよ」とムカつく口調を意識して言えば子供たちはムキになって投げ続けてきた。
その大方がみゆきちゃんに直撃するので少々申し訳なかったが。




【緑川なお】
「こらー!!お姉ちゃんたちいじめちゃ駄目でしょ!!」


「うわ、こっちも鬼だ!」




なおちゃんのお怒りに子供たちは笑顔で逃げ出した。どうやら叱られるのにも慣れているご様子。そりゃこんだけ兄弟いたら一緒にいたずらして怒られる回数も増えるわな。




子供たちの相手をしていたらいつのまにか時間がたち、なおちゃんの見事な料理に舌包みをうってお昼は過ぎて行った。




 
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