氷る猫の暗躍 | ナノ
05.サッカーとかしてみる
携帯の着信が鳴り響いた。
といっても、買った時の初期設定のままなので、非常に可愛らしさからは程遠いものなのだが。
ガラケーなので蓋を開いて確認する。するとそこには、「星空みゆき」と友人の名前が記されていた。



【ティオ】
「もしもしー?」


【星空みゆき】
『あっ、ティオちゃん?今大丈夫?』


【ティオ】
「うん!大丈夫だよ」



今日は学校は休み。所謂休日ってやつだ。
丁度、「流石に休みの日までプリキュアにべったりは逆に違和感あるし、迷惑だろうから休日はどうしようか」と悩んでいたところだ。
まさか当の本人からご連絡があるとは。いやはや人生ってやつは何が起こるかわかんねーな。



【星空みゆき】
『わたしね、緑川さんの家までプリキュアのお誘いに行こうと思うの!ティオちゃんって緑川さんと仲良いでしょ?家の場所わかるかなぁって』


【ティオ】
「もち!わかるよー。今どこ?」


【星空みゆき】
『……わかんない』


【ティオ】
「…………」




はい?




【星空みゆき】
『一人で緑川さんの家を目指してたんだけど、道わからなくなっちゃって……』


【ティオ】
「どうしてそうなった」


【星空みゆき】
『だって引っ越してきたばっかで道わかんないんだもーん!!』


【ティオ】
「そういうことなら最初から人を頼りなよ……」


【星空みゆき】
『うー……はっぷっぷー……』



口では文句を言いながらも、相手が思惑通り自分を頼りにしていることに満足感を覚える。



【ティオ】
「とりま現在位置ー」


【星空みゆき】
『わかんないよー……』


【ティオ】
「ですよねー。とりあえず道しるべっぽいの言ってごらん?」


【星空みゆき】
『うーんと……』



みゆきちゃんが悩んでいると、電話口から「星空さん……?」と誰か別の声が聞こえた。
ああ、この声はなおちゃんだ。なんだ、僕が出るまでもなかったようだな。
ガシャンッ!!という音と共に「緑川さぁーん!!」と、おそらくなおちゃんになきついたであろうみゆきちゃんの声が聞こえる。
多分、感激のあまり携帯落としちゃったんだろうなぁ……。
あーあ、とみゆきちゃんとこの携帯の安否を心配するが、今だ通話が途切れていないところ無事だろう。
しばし経っても電話口に相手が出ないので、もう通話を切ろうかと迷っていると、「もしかして、ティオ?」となおちゃんの声が聞こえてきた。



【ティオ】
「よっす」


【緑川なお】
『星空さん、どうしたの?』


【ティオ】
「なにも言わず受け止めてあげて。迷子なの」


【緑川なお】
『そっか』



電話の向こうでなおちゃんが爽やかに笑う気配がする。



【ティオ】
「とりまみゆきちゃんの回収ありがとね。こっちの手間が省けたわ」


【緑川なお】
『ううん、気にしないで』


【ティオ】
「それにしても、なおちゃんが見つけたという事はー……みゆきちゃんってもしかしてなおちゃん家の近くにいたの?」


【緑川なお】
『そうなんだよ、びっくりしちゃった。それよりさ、今星空さんをうちに招待しようと思うんだけど、ティオも一緒にどう?お昼ごはんも兼ねて』


【ティオ】
「え?僕お呼ばれしてもいい感じ?じゃあ行くー!」


【緑川なお】
『はやく来ないとうちのちびっ子たちに取られるよ』


【ティオ】
「丁度みゆきちゃん回収のために近く歩いてるからすぐだと思うよ。もしかしたら君たちより早いかもねw」


【緑川なお】
『わかった。こっちも早く向かうよ!』



そこで通話を切る。
ぶっちゃけ嘘だ。バッドエンド王国の自室にいる。しかし、近くにワープすれば嘘にはならないだろう。
僕は立ち上がり、パジャマからさっさと外出用の服に着替えて部屋を飛び出した。



 
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