氷る猫の暗躍 | ナノ
04.美化ポスターとか手伝ってみる
放課後。
僕らの前で、黄瀬ちゃんは困ったように眉を八の字にしていた。



【黄瀬やよい】
「星空さん、どうしてわたしを推薦したの?」


【星空みゆき】
「だって!黄瀬さん絵うまいじゃない!」


【日野あかね】
「やよいなら、きっと優勝できる!」


【ティオ】
「以下同文」



そういうものの、黄瀬ちゃんの表情が晴れることはなかった。
むしろ俯いてしまうくらい。



【黄瀬やよい】
「三人は、何も知らないからそんなことが言えるんだよ……」


「「「?」」」



黄瀬ちゃんに連れられてやってきた美術室なるところ。
その中心で愉快な髪型の男が「アートは爆裂だぁー!!」と叫んでいた。そんなこと叫ぶ忍者たしかいたぞ。



【黄瀬やよい】
「蘇我君は美術部の部長で、コンクールで入選したこともある天才」


【ティオ】
「あれが……?」



世も末だ……。



場所を移してどっかの教室。
黒板にチョークで絵を描く少女発見。



【黄瀬やよい】
「美川さんは少女マンガを描くのが得意な学校のカリスマ」



へぇー。
コメントする要素がベレー帽しかない。すまん。



ところかわって教室に戻ってきた僕たち。
教室の窓から外を見下ろす。
割かしイケメンが女子に囲まれながら女子を描いてるところ発見。



【黄瀬やよい】
「成島君は、女子を美人に描くのでモテモテ……」



成島……ナルシストと語呂が合うわ…あ、ナルシのところだけだけどね……プッフ……。
小さく吹いたらあかねちゃんから怪訝な目で見られた。



【日野あかね】
「確かに、強豪揃いやな……」


【ティオ】
「いや、最後の奴は別にそれほど強豪にも見えなかった」


【黄瀬やよい】
「私なんか、絶対無理だもん……」


【星空みゆき】
「やる前から諦めるなんて勿体無いよ!頑張ってやってみようよ!」


【黄瀬やよい】
「でも私、泣き虫だし自信ないし、本番に弱いし……」



スケッチブックを抱えながら、俯いてしまう黄瀬ちゃん。
黄瀬ちゃんの様子に日野ちゃんは申し訳なさそうに、



【日野あかね】
「やよい、ごめんな?嫌やのに無理に押し付けたみたいな感じになってもうて。れいかに、断ってくるわ!」


【黄瀬やよい】
「え……」


【日野あかね】
「ちょっと待っててな!」



と、走り出すあかねちゃんの手をとって止める。



【日野あかね】
「ティオ……?」



戸惑ったような顔を向けるあかねちゃんに、「ちょっと待ってねー」と待ったをかける。
そしてみゆきちゃんを見る。
みゆきちゃんは小さく頷いて、黄瀬ちゃんに向き直り、



【星空みゆき】
「黄瀬さん、わたしね、本で読んだ事があるの。絵は心を写す鏡だって」


【黄瀬やよい】
「どういうこと…?」


【星空みゆき】
「黄瀬さんは、確かにちょっと泣き虫かもしれないけど、とっても優しくて思いやりたっぷりで、だからそんなかっこいいヒーローの絵が描けるんだと思う」


【日野あかね】
「みゆきの言う通りや」


【ティオ】
「うん!」



みゆきちゃんの言葉に僕もあかねちゃんも笑顔で語りかける。



【星空みゆき】
「確かに結果はわからないけど、もし黄瀬さんが少しでもやってみたいなら!」



確かに、揺れ動いた。
みゆきちゃんの言葉で黄瀬ちゃんの心が。
思った通り黄瀬ちゃんは決心した顔で僕たちを向き、



【黄瀬やよい】
「私、やってみたい!」



宣言した。



【日野あかね】
「よっしゃー!やよいがその気なら!」


【星空みゆき】
「わたしたちも手伝うね!」


【ティオ】
「画材の提供なら任せてね!僕の家に使ってないのが大量にあるから!」



僕らの言葉に黄瀬ちゃんは驚いた顔をしたが、すぐに泣きそうな顔になり、



【黄瀬やよい】
「三人とも…ありがとう……!」



といって若干泣き出した。



【日野あかね】
「ほんまに泣き虫やなぁ……」



呆れたようなあかねちゃんにただ笑いかけることしかできなかった。



 
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