Vampire Tale | ナノ

第一話




「さて…」



錆びれた屋方の地下。
そこにはほこりの積もった玉座が鎮座していた。
その玉座を美女は見下ろし、手で申し訳程度に払い落とした。
その上に勢いよく座る。
ほこりが砂塵のごとく舞うが、意にも介さず足を組んだ。
クチュン、というくしゃみが地下に響く。
意には介さずとも鼻にはくるらしい。



「……今は二十一世紀、か。つまり三世紀寝ていた事になるな」



我も早起きになったものだ、そう呟いて「やれやれ」とでも言いたげに首をふる。



「さて……その間にいったいどれほど世間は変わったかな?」



ニヤリ、と口に弧を描いて立ち上がる。服についたほこりを払うのも忘れずに。



「そうだ。外に出よう。はは、そうと決まれば善は急げだ」



颯爽と歩き出し、出口へ向かう。
そして、だんだんと暗闇へ近づき、溶けるようにそこへ消えていった。
響くのは、大勢の蝙蝠の羽音と鳴き声。それらがいっせいに飛び立ってゆく音。





彼女、リーバルントウ・ナーシャリア――リーナは、吸血鬼である。





 




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