【リーナ】
「おお、まだ残っておったな」
リーナはひとまず、並盛中学校の応接室まで来ていた。
そこには立派な机で仕事をする雲雀の姿が。
【雲雀恭弥】
「……」
雲雀はスン…を鼻をひくつかせ、
【雲雀恭弥】
「へえ、一時はどうなるかと思ったけど…その様子だとちゃんとできたんだね」
【リーナ】
「貴様、我が勘違いしていると気づいていたのなら教えんか」
リーナはわかりやすく顔をしかめ、「ほれ」と箱を差し出した。
【雲雀恭弥】
「わお、こんな大きさなんて嬉しいね」
【リーナ】
「これで文句は言わせんぞ」
【雲雀恭弥】
「上出来だよ」
「偉そうにしおって」、リーナは雲雀の態度に不機嫌にフンッと鼻を鳴らす。
【リーナ】
「して、ほかの風紀委員の者共はどこだ?」
【雲雀恭弥】
「は?」
【リーナ】
「いや、貴様言ったではないか。バレンタインは部下が上司にチョコを贈る日だと。で、あるからして我はこのトリュフを――」
【雲雀恭弥】
「手が滑った」
【リーナ】
「貴様ああああああ!!!!」
雲雀は無言でリーナの中のトリュフをかっさらい、トンファーで粉々に打ち砕く。
「ああぉう」と声にならない声でリーナは粉々のトリュフを見つめた。まさにチョコレートパウダーである。ココア作れば?ってくらいである。
【雲雀恭弥】
「君は僕にだけ作ってればいいんだよ」
【リーナ】
「なんだそのジャイアン」
【雲雀恭弥】
「僕が一番上司なんだから、僕の命令が絶対でしょ。文句は僕より上司になってから言うんだね。
もう一度言うよ、君は僕にだけ作ってればいい」
【リーナ】
「……」
リーナは腑に落ちないという表情をしつつ、「…左様か」と引き下がった。
【リーナ】
(やれ…ボンゴレのボス候補が気になり入学してみればとんでもないガキになつかれたもんだな…)
上機嫌に箱を開ける雲雀をしり目に、リーナは笑みを浮かべる。
【リーナ】
(まったく、ガキはいつの時代も変わらんもんだ。可愛がり甲斐がある)
「お皿とフォーク出してよ」と命令する雲雀に、「はいはい」と素直に従うリーナ。
彼女は数世紀生きた長寿のバケモノ。
年功による余裕は、雲雀の度の過ぎた命令を『子供のわがまま』と捉えさせた。
つまり、リーナは雲雀を子供、ひいては孫のように接している。
その「わがまま」に含まれる独占欲も知らずに。