Vampire Tale | ナノ





【ビアンキ】
「逃がしたわ…」



あれから数分後。
ほとんど調理が終わったころに、ビアンキは今にも舌打ちしそうな顔をしながら帰宅。
その服装は激しい運動のせいか少し乱れている。



【ハル】
「お帰りなさい!クラッカーもできましたよ!」



不自然極まりないビアンキに、ハルはなんの疑いもなく焼きあがったクラッカーを見せる。
京子も、「上手にできましたね!」と笑顔だ。



【リーナ】
(まあ市販のものだからな…)



笑顔の裏にそんな身も蓋もないことを思うリーナ。



【京子】
「リーナちゃんも上手にできたね!」


【ハル】
「おいしそうですー!」


【リーナ】
「なに、沢田ママのおかげだ」



もう後は冷やしてラッピングするだけになったガトーショコラと、すでにラッピングの施されたトリュフの包たちを見ながら、リーナは満足そうに頷く。



【リーナ】
(これで文句は言わせん)



思い浮かべるのは、あの小生意気な風紀委員長。
ガトーショコラに粉砂糖をふりかけ、ワンホール丸々箱詰めにする。



【リーナ】
(本来の目的は達成したし、クラッカーも無事変えたし、チョコフォンデュは京子らが作ったから大丈夫だろう。これでフゥ太たちも無事なはずだ…)



借りたエプロンをたたみ、「本日はありがとうございました。後日改めてお礼させていただきます」と奈々に頭を下げる。
奈々はそんなリーナに対し、「いいのよーそんな気にしなくて」と笑った。



【リーナ】
「では、我はさっそくこれらを届けるのでこれにて失礼――」



ブショァアアアア……



振り返った先、ビアンキがさらに並べるクラッカーから、あのグロテスクな効果音が。
リーナは「ん?」と目の前の光景を素直に受け入れられなかった。
それから数秒し、「……」と思考を放棄した。
「ふっ」と、突然不敵に笑うと、さっさと荷物をまとめ、



【リーナ】
「お世話になりました」



とさわやかにその場を後にした。
玄関へ向かう途中、リーナは綱吉たちをすれ違いざまに、



【リーナ】
「我にもできることとできないことがあるのだ」



と小さく言った。
リーナの言葉の意味を綱吉たちが知ることになるのは、数分後の話である。




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