Vampire Tale | ナノ





フゥ太が沢田家で美味しい昼食を採っているのとほぼ同時刻。
リーナは正座をしていた。



【雲雀】
「……君、風紀委員の自覚、ある?」


【リーナ】
「ありますん」


【雲雀】
「どっちそれ」



不服そうな表情ながらも正座をし続けるリーナ。根は素直ないい子なのがこの様子からして伺える。
リーナの様子を一瞥して、「ちょっと反抗期に入った娘ってこんな感じなのかなぁ」と中学生離れした思考をした後に雲雀は、イスから立ち上がり



【リーナ】
「…………」


【雲雀】
「…………」



リーナの右手を持ち、指を絡めてきた。
「あ゛?」とでも言いそうな表情で、反抗するでもなくただその様子を眺めるリーナ。
リーナの様子に興味ないのか、ギュッと手を握り、



【雲雀】
「……手、握って歩いてたよね」


【リーナ】
「なんか文句あるのか」


【雲雀】
「……別に」



「あぁん?」と唇を尖らせ、更に怪訝そうな表情をするリーナ。美人台無しである。



【リーナ】
「しかし驚いたな。叱られると思っておったのだが」


【雲雀】
「ふぅん、どうして?」


【リーナ】
「どうして、と言われてもな……。風紀委員が学校をサボっては面目ないだろう?上司として、部下の不手際は叱らねばならぬものだしな。我も例外なく叱られると思ったのだが、どうしてこうなった」



現在状況=委員長様が美人台無しの顔で正座をしている吸血鬼の右手に左手で指を絡めている
実にシュールである。



【雲雀】
「……(ギリギリギリ)」


【リーナ】
「どうした雲雀。いきなり左手の握力を強めよって。我の右手ミシミシ言っておるのだが痛いこれ地味に痛」



ミシミシボキッと音を鳴らしながら変形していくリーナの右手。
しかし雲雀は通常運転でリーナの右手を気にしない。



【雲雀】
「次、あんなことがあったら右手じゃ済まさないよ」


【リーナ】
「……ふ、そういうことか。了解したぞ」



この右手騒動を雲雀なりのお叱りと受け取ったリーナは、すっかり形の変わった右手を左手で覆った。
覆われた左手が右手から離れる頃には、右手はすっかり元通りになり、傷など見る影もなくなっていた。



【リーナ】
「言い訳はしない。本日はサボって申し訳なかった。謝ろう」




いつもの余裕の笑みを消し、真剣な表情で謝辞を述べるリーナ。
滅多にない様子に雲雀は一瞬面食らったものの、すぐに普段の表情に戻り、




【雲雀】
「反省してるんならいいんだよ」




それだけを言って背を向けた。




【リーナ】
「さようか。それはありがたい」


【雲雀】
「ああ……そうそう、リーナ」


【リーナ】
「なんだ?」



雲雀は珍しく気まずい表情をしながら、




【雲雀】
「差別は、しないけどね……年下の子に手を出すのは、程ほどにしておいたほうがいいと思う」


【リーナ】
「ちょっとまて、貴様我に対して妙な認識を持っていないか?」


【雲雀】
「いいんだ誤魔化さなくても。なるべく君の嗜好に向き合うようにする……」


【リーナ】
「雲雀待て、きっと貴様は酷い勘違いをしている。我は別にそういった嗜好は持ち合わせていな」


【雲雀】
「虚偽の宣告なんて言わなくてもいいんだ!」


【リーナ】
「ちょっと待て話を聞いてくれ!」




風紀委員内部戦争記念すべき第一回が、今勃発した。




 




「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -