Vampire Tale | ナノ





リーナが助けたのは、『星の王子様』『ランキングフゥ太』等と呼ばれる、縦縞模様が特徴のマフラーを巻いた男の子、フゥ太である。
ランキングを作らせたら右に出る者はいないとまで言わしめる情報屋で、彼が作ったランキングは的中率100%だ。
ゆえにその情報をほしがるマフィアなど数知れず。
的中率100%ゆえ、マフィアの戦略データの価値が高く、最も多くのランキングを収録している、彼の持つ「ランキングブック」を手に入れれば世界をも取れると言われるほどだ。
落ち着けるよう、座れる場所……公園のベンチで黙って話を聞いていたリーナは、「ふーん」とあまり興味なさそうに相槌を打った。
おもむろに立ち上がると、近くの自販機まで行き、オレンジジュースを一本買った。
それをフゥ太へ「ほれ」と投げる。
フゥ太は、「わわっ」と慌てたように受け取った。



【リーナ】
「なに、無理に聞いたことへの慰謝料だ。収めておくれ」



そういって自分の分のコーヒー(微糖)を買っていた。
フゥ太は「あ、ありがとう」と言うと、プルタブを開けチビチビと飲み始めた。
リーナは再びフゥ太の隣へ座り、足を組んで右手をベンチの背もたれへ乗せ、無駄に堂々とコーヒーを煽る。
二人とも同時に「プハー」と息を吐いた。



【リーナ】
(さて、これからどうするか)



リーナは公園に設置された時計を見上げた。
時刻は八時五十分。所謂「遅刻」決定時間だった。
やれやれと首を振ったリーナは、数日前雲雀から(強制的に)プレゼントされた携帯を取り出し、ある人物へ電話をかけた。
数回のコール音のあと、焦った調子の声が受話器から聞こえてくる。



『誰だよ!今学校だって!先生にバレそうになっただろが!』


【リーナ】
「よぉ委員長」


『な!?リーナ?』



電話の主は、リーナのクラスの委員長だった。




『おま、どうして俺のばんご――』


【リーナ】
「我、今日は頭が痛いから休む」


『嘘をつけ』


【リーナ】
「まぁそういうわけだから、今日はそちらへ行けぬ。皆にもそう伝えておくれ。じゃ」


『あ、ちょ、まっ――』



返事を聞かず、リーナは「ピッ」と通話を終了した。
そしてフゥ太の方へ向き直り、



【リーナ】
「やれ、貴様これからどうする?いく宛は決めておるのだろ?」


【フゥ太】
「うん。ツナ兄を頼ろうかと思うんだ」



ツナ兄?はて、どこかで聞いた事あるような……
そう思いながらリーナは小首をかしげ、しばし逡巡した後、ああ!と納得した。



【リーナ】
「沢田綱吉か」


【フゥ太】
「そう!」



フゥ太はご機嫌に頷いてみせた。



【リーナ】
「ほう、いつ頼む?」


【フゥ太】
「今日の放課後にでも……」


【リーナ】
「放課後……」



リーナは時計を見上げる。
八時五十五分をさしていた。



【リーナ】
「たっぷりあるな」


【フゥ太】
「たっぷりあるね」



なにがたっぷりって、いわずもがな時間が。



【フゥ太】
「……ねぇ、リーナ姉」


【リーナ】
「(姉……)…なんぞ?」


【フゥ太】
「お願いします!」



フゥ太はリーナに向き直ると、いきなり顔の前で手を合わせ、



【フゥ太】
「さっきの戦闘で見せてもらったリーナ姉の実力を見込んで頼みたいことがあります!


どうか今日の放課後まで僕のボディーガードをしてくれませんか!?」



先ほどの戦闘。
それは、男が撃った弾をもろに腹部に食らったにもかかわらず、何事もなかったかのように立ち上がり、その上反撃をして男たちを追い払った先ほどの出来事。
フゥ太には、あれは撃たれて体内に入った弾が、……まるで体の中を通して、手のひらに移動したように見えた。
まるで、体から出た血液が自ら主のもとへ戻っていったように見えた。
まるで、傷が瞬時に治ったように見えた。
いつもなら自分の好奇心でランキングをとるところだったが、いったい彼女が何者で、それを知ってしまった自分がどうなるのか。想像するだけで恐ろしい思いだった。
世界中のマフィアに追われている彼が、だ。
しかし、だからこそ、この人に守ってもらったら確実だ。
そうフゥ太は確信していた。
そしてそれは間違いではなかった。
……もっとも、やっぱり怖いので一日限定だが。
リーナは顎に手をやって、あざとく考えるふりをし、



【リーナ】
「……サボって正解だったな」


【フゥ太】
「?」


【リーナ】
「フゥ太、今日の放課後まで我が貴様のボディーガードをしてやろう」


【フゥ太】
「えぇっ!」


【リーナ】
「先ほどの慰謝料、そのジュースでは我の気がおさまらんでな。貴様がよければの放しだが」


【フゥ太】
「本当に!?いいの?」


【リーナ】
「なに、旅は道ずれ。世は情け。袖振りあうのも何かの縁と言うしな」



そう言うと、リーナはいつの間にか空にした空き缶を公園のゴミ箱に投げ入れ、



【リーナ】
「さ、いくぞ。ぐずぐずしていたらまた面倒になりそうだ」



そういうと、フゥ太へ手を差し出した。
フゥ太は愛嬌のある笑顔を浮かべるとその手を素直にとり、二人はまるで姉弟のように手をつないで公園をあとにした。



 




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