part27
彼の意識が目覚めたら、すぐに信号がくるように設定されてある。
今日もその信号をキャッチしたので、カメラから彼の部屋をチェックする。
いつもなら勢いよく飛び起き、さっさとテストの準備をするのに今日はとても静かでした。
それがどうしてか不安で、しばらく様子を見ましたが、たまらず声をかけてしまいました。
『おはよう』
そう、笑顔で挨拶をする彼はいつもと変わらないように見えて、どことなく元気がない。
『……妹の夢を見たよ』
妹、とは彼との会話の中に数回出てきた存在。
詳しいことを話してはくれませんでしたが……とても彼に愛されているんだろう、ということは理解していました。
【そうですか、それは良かったですね】
きっと彼の事だから夢の中で妹さんと楽しく過ごしていたのだろうと思い、嫌味を込めて言う。
彼はそれを知ってか知らずか、ゆるゆると起き上がり、
『うん、おかげで大切なことを思い出せたよ』
【大切な事?】
その大切な事、とはいったいなんですか。
嫌な予感しかしません。
『そう、大切な事』
あなたは私の、この不安を知らないんでしょう。
だからそんな、笑顔を浮かべられるんでしょう。
『GLaDOS、君は俺の事好き?』
今度はいきなりなんですか。
そんなの、いくら考えても私には理解不能でした。
あなたに会って、少し時間が過ぎたころから今まで考えても答えを導き出すことはできなかったのです。
それを、今すぐ答えるなんて無理ですよ。
【……どうでしょうね】
仕方なく、曖昧な返事を返す。
『そっか……』
すると、悲しそうな表情を浮かべるあなた。
待ってください、違うんです。私はあなたにそんな表情を浮かべさせたいと思ってああ言ったんじゃないんですよ。
そんな、無理に笑顔を作ったりしないでください。
『俺はね、GLaDOSのことが好きだよ。きっと、もう君以外にはこんな感情抱けないくらい』
【何度も聞きました、あなたのその告白は。聞き飽きるくらいに】
本当、毎日毎日飽きもせずに言い続けるあなたのせいでね。
『俺も、自分の耳にタコが出来るんじゃないかってくらい言ったよ。もう、満足するくらいに』
ええ、私もですよ。
満足するくらい、愛されたと思います。
『でも、君は俺のことは、好きじゃないよね』
【……わかりません】
『わからなくていいよ。大丈夫』
彼の「大丈夫」という声が優しく響いて、混乱を起こしていた頭を落ち着かせる。
全く、この期に及んでもあなたは私優先なんですね。
そんなところが、私にとっては初めてのことでいつも戸惑ってしまうんです。気づいているでしょうか。
『ねえGLaDOS、今日は君に会いに行って良いかな』
折角落ち着いた頭も、あなたのその寂しそうな、悲しそうな顔のせいでまた混乱を起こした。
まるで最後の挨拶のよう
(なんなんですか)
(そんな、まるで)
(これから「さよなら」とでも言うようじゃないですか)