りんさくフェスタ | ナノ

君と超える境界線


なんとなくりんねからふと熱っぽい視線を感じることはあった。けれど何度も気づかない振りをした。知らないふりをして、必死に距離を保った。今の距離を壊して、大事なものが壊れるのが怖かったから。

校庭に桜が舞い散るとある日、りんねから呼び出しを受けた。心の底では気づいた気持ちに蓋をして、体育館裏に行った。そこにはりんねが髪に負けないくらい赤い顔をして立っていて、桜は嫌な予感がした。りんねとは今この距離感がとても心地よかった。今から言われるだろう言葉を聞いてしまうと、この心地よい距離は崩れてしまうから、怖かった。しかしりんねはもう我慢できなかったのだ。このぬるま湯のような関係に終止符を打ちたかった。
「真宮桜……」
りんねの熱っぽい視線には未だに気づかない振りをした。りんねとはクラスメートで、それではダメなのかと桜は思った。ちょっと変わった席が隣のクラスメート、ついつい気にかけてしまうクラスメート、いないと面白くないクラスメート、そして、私のことを考えてほしいクラスメート。りんねは桜にとってそういう存在だった。それ以外の関係をつけたくなかった。
「ごめん、六道くん」
この雰囲気に我慢できなかった桜は、りんねに背を向けて走り出した。焦り出したのはりんねだ。りんねはまだ何も伝えていない。名前を呼んだだけだ。せっかく決意をしたのに、伝えることもなく拒絶されるなんて、悲しすぎるではないか。りんねは反射的に桜を追って走り出した。
桜はりんねが追ってくるのを背中で感じていた。しらばっくれてもダメなのはわかっている。りんねが悲しんだかもしれないと思うと桜の胸は痛んだ。りんねに申し訳ないと思いながらも、桜にはまだ時間がほしかった。大事なことだからこそ、もう少し待ってほしかった。ふと、桜は足を止める。後ろを振り向くともうりんねは追いかけてきていなかった。自分勝手だけれど、とても寂しいと思った。自分が逃げ出したのだから、自業自得だと思う反面、捕まえてほしいと思ってしまった。桜はこの気持ちの答えがわかってしまった。でもわかった時は遅かった。気づいた時には手遅れだ。こうなるならもっと早く、あの視線に気づいておけばよかった。たくさんの後悔と共に、次は自分から告白しようと思った。決意をしてくれたりんねの気持ちを踏みにじってしまったのだから、次は自分が勇気を出そうと思った。
「こんなところにいたのか、真宮桜」
振り向くと、息を切らしたりんねが立っていた。
「ねえ、六道くん」
「待ってくれ、やはりおれが言いたい」
そう言ったものの、りんねは汗をダラダラと流し、顔を赤くして、固まる。そんなところもとても愛おしいと思った。
「真宮桜」
お返しに好きですと言う準備はできている。


奏さま、素敵なリクエストありがとうございました!奏さまの想像するりんねの告白はどういうものなのでしょうか。とても気になります(笑)
しっとりした告白もいいなと思ったのですが、なんとなくらしくなくバタバタにしてみました。楽しかったです。肝心の告白の台詞は、せっかくなので妄想の余地があるようにしたりして、となんだかとても楽しく書けました!ありがとうございます。

150505 鞠音



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