サービス係の女性の叫び声が、進む足を止めさせた。飛行機の亀裂からゾンビが出て来ていた。倒れこんでしまっている彼女に今にも飛びかかりそうなゾンビが一体、その後ろに数体。間近で見るゾンビの恐ろしさに身体が固まってしまっている。
レオンとアンジェラがすぐに発砲し、彼女の硬直が潔く解けたように見えた。すぐに身体を捻って動こうとするところは女性ながらも非常に勇敢であった。

「大丈夫ですか?!」

ディアナが彼女を立たせ、目を合わせる。無言で頷くサービス係の女性に、7年前の自分が被る。
しかし次々と出てくるゾンビがそれを許してくれることはない。あまりの数にレオンが舌打ちした音が聞こえた。
飛行機内でもバイオハザードが起こったのだろうか?飛行機から出てきたのだからそうなのだろうと思うが、それにしては飛行機の衝突よりも前に空港でもゾンビが現れた。二箇所で起こるにしても、そのt-ウィルスは一体誰が持ち込んだのだろう?

二つの情報が噛み合わない。
誰が、どんな目的でウィルスをばら撒くというのだろう。アンブレラの場合はアークレイ研究所とラクーンシティは事故だった。ユタは実験施設ごと自分たちが破壊した。ロックフォート島はアンブレラが実験として意図的にウィルスを流した。ロス・イルミナドスはサドラーの支配によって―――。
空港と飛行機でウィルス感染が起きたら多くの人が犠牲になる。そんなことは犯人はわかっている。わかっていてやるのだ、絶対に何かの意図があるに違いない。最近不穏な噂のあるテロだとしても、そのテロの目的は一体何なのか―――様々な思想がこの場で絡み合っている。

「ディアナ!ぼうっとするな!」
「!」

レオンの声にハッとして顔を上げる。彼はまた先頭に戻り、移動しようと前方のゾンビに攻撃していた。飛行機の方はアンジェラが一人で撃ち続けている。減る気配がないため、そろそろこの場から離れるだろう。本当の強行突破が近づいてきた。
クレアはアンジェラの後ろに立って、残りの人たちに少しでも安心を持たせようとしている。

ディアナは、キョロキョロと下の方を見回している議員にすぐに不信感が沸いた。自分の隣でそんなに挙動不審に見回されたら誰だって目に付くだろう。議員が見ている方向は、レオンが進もうとしている方向とは逆方向だったが、ゾンビの影は見当たらない。まさか―――

「ちょっと、待っ―――きゃっ?!!」
「キャー!!」

一人で逃げようということに気付き、肩を掴んで止めようとしたが、議員の必死な状態の馬鹿力に敵うわけがなく、思い切り振りはらわれた弾みで体のバランスがとれなくなった。そのまま瓦礫を踏んでしまい、後ろに重心が傾く。
更に彼は隣に立っていたラーニーにぶつかり、彼女を下へと落してしまったが、自分のことしか頭にないらしい。振り返ることもなく、痛めた腰をさすりながらよろよろと走って行ってしまった。

咄嗟に怪我をしている後頭部を守ろうと体を捩るが、ガタガタの地面に正面から突っ込むことになってしまった。腕で顔を庇ったとはいえ、思い切りぶつけてしまったために体中にその衝撃が走る。痛みがすぐにやってきて、呼吸が途切れ途切れになった。

「…はっ…ゲホッ、う…」

咳をしながらも骨が折れていないかどうかを確認する。肋も腕も折れてはいないようだが、痛みが酷い。打ちつけた場所が熱を持って、心臓もそれにつられて早く鐘うっているようだ。腕を支えに立ち上がろうとしても、痛みですぐに膝をついてしまう。

―――立って、立ってラーニーのところに行かないと!!

一緒に落ちたラーニーは少し距離があるところにいた。怪我をしていないように見えるため、少しホッとしたが、すぐ近くに違うゾンビが来ている。さっきまでいなかったのに、と思うが、たまたまゾンビが確認できなかっただけだったのだろう。
ラーニーもすぐ近くまで来ているゾンビに気付き、再び大きな悲鳴を上げた。

「キャー!!」
「ラーニー?!」

上にいたクレアがすぐに動いて、うまく瓦礫を渡って下りてきた。これならラーニーは大丈夫、そう思ってまた体に力を入れる。今は自分の身を守ることだけ考えないと足手纏いになりそうだった。






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