想う気持ちが高まって言葉にならないってこういう事なんだと知った気がした。好きだなぁ、傍に居たいなぁと感じる瞬間は本当に数えきれない程だけど、今は隆也が欲しくて欲しくてたまらないと、とても口には出せない事さえ頭に浮かんでくる。
会えない時間が気持ちを募らせるなんて、そんな寂しさと引き換えに得るものなんて要らないからと貴方の隣を望んだ。でもそれが叶わない現実もこうやって貴方が満たしてくれるなら暫しの寂しさも耐え甲斐があったと、もっと近くに来てと、貴方が寄せてくれる唇にそう願った。


玄関のドアを開けた瞬間、いらっしゃいという出迎えの言葉を完全に塞がれ重なったそれは、私の半端に開いた唇によって触れ合った直後に深くなった。ねっとりとした舌を差し込まれ、何処か必死なそれに応えようと私も固く目を閉じる。腰の辺りに回された隆也の腕に力が籠もった。
引き寄せられ、衝動のままに何度も角度を変え繋がるそれに、気が付けば力の抜けた私の身体は隆也によって支えられていた。息苦しさを察してかやっと出来た私と彼との唇の距離は、額をくっ付けあってのたった数センチ。

「―名前、わりぃ、こんなとこで、」
「ううん、いいの。いいから…」
「…ん、」

今度は私から、吸い寄せられるようにめちゃくちゃに絡み合わせた。

隙間から漏れる吐息と一緒に聞こえてくる濡れた音に酔わされる。お腹辺りから服に侵入し上昇してきた隆也の掌が胸を包み込んでやわやわと動くから、離れない口元から声が漏れてしまう。

「…んっ…隆、也…」
「…何、」

呼べば離してくれた唇は、頬、耳、首筋と移動し、其処では一際強くピリッとした感覚があって、感じる吐息にゾクッとした。空いた片手が背中に回り簡単に外された金具と突然の解放に、あ、と力ない声が漏れた。

「な、名前。俺もう我慢出来ねんだけど」

耳に届いたその時にはふわりと浮遊感があって、私を抱き上げた彼はそのまま進みベッドへ私を下ろした。

仰向けの私に覆い被さる隆也。手首を縫い付けられ、歴然とした力の差を見せ付けられる。男を感じてしまうこの態勢に、否応なく反応してしまう。
恥ずかしさから視線を反らそうとしたけれど性急に差し込まれた舌は愛おしむように私に触れた。

「…っ、なんか余裕ねぇ、優しくなんて出来ねぇかも」

朧気な意識の中で聴いたその声に薄らと目を開いてみると、まるで熱に浮かされているかのように濡れた瞳をした彼が居て、自然と乱れていく呼吸がいつもより熱を持っている気がして、身体の中心が疼きだすのを感じた。

唇を離れ首、鎖骨とどんどん降りていく隆也の唇。先刻まで指で触れていた場所を今度は舌先で転がされて有り得ないくらいの感覚に目眩がした。おかしいくらいに敏感な身体に不安になってしまう程。

「ちょ…、待…」
「待たない。」

空いた手が腰の辺りを這い降り太股を伝い、いとも簡単にスカートの中へ侵入し、下着の横から入り込んだ指が粘液に触れるとすぐに身につけていた物を剥ぎ取られた。

ふと気付けば、私は既に裸同然の姿にされているというのに彼はシャツ一枚乱れていなくて。彼の固く主張するそれは布越しに感じるというのに自分ばかりが全てを見せているのが悔しくて、私はそっと手を伸ばし撫で上げれば、うっと少し苦しそうな声を漏らし表情を歪めるからほんの少し微笑んでみせた。

「…もう無理、」
「…え?」
「こんだけ濡れてりゃ平気だろ」

突然指を差し入れられたが直ぐに去った。私は両足を大きく広げられ、目の前で服を脱ぎ捨てる彼を眺めていた。

「何見惚れてんの」
「ん、綺麗だなって、」
「馬鹿。」

私に覆い被さり目を瞑って濃厚なキスをくれる彼を可愛いと思った。そしてそのまま、彼はぬるぬると私と絡ませ合うようにして、先端を押し進めてきた。
心地の良い圧迫感に我慢できず唇を離して声を漏らす。こんな間近で表情を拾われたくなくて背ければ耳へキスを落とされ、彼の乱れた息遣いと小さな喘ぎに身体が震えた。

「…締めすぎ、直ぐいっちまうだろうが、」
「そ、んなの、知ら、な…い…」
「……もう、動くから、」

浅く引き抜いては奥を擦るように掻き回される。彼にかかれば私は一際甲高い声の出る場所を容易く見つけられてしまう。

「名前、此処気持ち良い?」
「…や、聞…か、ないで…よ」
「…言って、」

言葉を求めてくるそれに断続的な声を漏らす事しか出来なかったけれど、つか、すっげぇ気持ち良いよ、俺も、と耳元で囁く此れは反則だ。彼をぎゅうっと締めあげるのを自分で感じながらも、だんだんと奥を突いてくる隆也もたぶん達しそうになっているんだと思った。

「隆…也、隆也、私もう、だめ…」
「あぁ、俺も…」
「あ、ん、ああ…、はぁっ…」
「…っ、」

びくびくと身体が震えて何だか滑り堕ちそうに感じるこの感覚、でもぎゅっと指を絡めて握ってくれたこの大きな手に安心し、漏れた吐息と私の中で弾けたそれを想いながら、呼吸を整えるように、お互いを抱き締めた。



「…どうしたの?今日、」
「何が?」

何がってその…と黙り込む私を覗き込んでくるその瞳は、絶対に私が聞きたいそれを把握している。が、容易に答えはくれないらしい。
何も身につけぬままベッドで身体を寄せ合いながら会話を交わすのも好き。口角を上げて笑うほんの少し意地悪い隆也も、それとは相反して優しく髪を梳く手も。

「…隆也、好きだよ」

ぽつり呟けば、知ってる、と一言。隆也は?と尋ねれば、言わなきゃ伝わんないの、ときつくなる抱き締める腕、額に触れる唇に、言葉じゃなくてもいいやと許せてしまうのは悔しいけど、

「あ、そうだ、」
「ん?」
「いらっしゃ「た だ い ま。」
「え?」
「ただいま。」
「…あ、おかえりなさい」
「おう。」

この時見せてくれた貴方のほんの少し紅潮した顔は、絶対に忘れないと思った。隆也がそんな顔見せてくれるから、思わず私も照れ隠しに笑う。

「此処に足踏み入れる男は俺だけだから。」
「?」
「例え大学の女友達も交えて一緒に押し掛けてきたとしても、俺が居ないときに男入れちゃ駄目だよ。解った?」

貴方の見せてくれた、私自身や私の周囲色んなものに対する独占欲が心地良いとさえ思える私は末期だ。

「ね、もう離さないで」
「名前を手離した事なんて一度もないよ」
「うん。ホントに隆也も此処に住んじゃえば良いのに。」
「来年、俺も名前の大学行くから、」

そしたら、今より一緒に居れっから。もう少しの我慢な。と、貴方は私を慰めるように言ったけど、まるで隆也自身にも言い聞かせるようなそれが凄く愛しかった。










所詮誰もが愛されたがりの、


100608 憂安


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